東京ゲームショウ2020オンライン(TGS2020 ONLINE)の主催者番組「2021年に向けたゲーム業界最新トレンド」が2020年9月25日に配信された。これから発売される新型ゲーム機と新たなゲーム体験をもたらすVR(仮想現実)機器を軸に、ゲーム分野の最新技術を紹介。そこから見えてきたのは、未来のゲームトレンドだった。

 「2021年に向けたゲーム業界最新トレンド」では、ゲームジャーナリストの新清士氏、テクニカルジャーナリストの西川善司氏、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの簗瀬洋平氏と、モデレーターを務める日経クロステックの東将大記者の4人が、ゲームの未来についてトークを展開した。最初のテーマは「最新コンソールゲーム機 PlayStaion & Xbox」。ここでは2020年11月に発売される新型コンソールゲーム機PlayStation 5(PS5)、そしてXbox Series X/Sの特徴と、その魅力について語られた。

ゲームジャーナリストの新清士氏
ゲームジャーナリストの新清士氏
テクニカルジャーナリストの西川善司氏
テクニカルジャーナリストの西川善司氏

 「グラフィックスがすごく向上している。5年先を見たハード。予想よりも感覚的に1万円くらい安い」と新氏。それに対して西川氏は「ゲーム体験を一段上げるマシン。早くPS5は背面にどんな端子があるのか見たい」と話す。簗瀬氏は「どのように体験が変わるかに注目。読み込みの速さにも期待」と述べるなど、全員が高い期待を寄せた。

 実はこの両マシン、ともにCPUに米AMDのZen 2、GPUは同じくAMDのRDNA 2を搭載し、骨格部の性能に大きな差はない。では違いはどこにあるのか。

ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの簗瀬洋平氏
ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの簗瀬洋平氏
モデレーターを務めた日経クロステックの東将大記者
モデレーターを務めた日経クロステックの東将大記者

 「ストレージとのバス接続が違う。PS5は伝送路が4車線あるイメージ。Xboxは2車線だけど、外付けSSDにも2車線ある。PS5は速度を優先し、Xboxは汎用性を追求している」と西川氏。また双方ともに3Dオーディオを採用しているが、「PS5は上下左右の360度をカバーする方式。Xboxはドルビーを使い、プロジェクトアコースティックという仕組みを採用している」と西川氏は違いを解説した。

 どちらを買うのがいいのか。そんな意地悪な質問に対しては「遊びたいゲームが出たら買う。面白さはスペックでは決まらない」という西川氏の言葉に全員が同意。その上で新氏は「ネットフリックスのビジネスモデルへのシフトが始まる。サービス面での競争へとシフトしていく」とみる。それに対して西川氏は「双方ともドライブがないモデルが象徴的。これはサブスク系のユーザーのためのハードになるだろう」と予想する。

両マシンの主な仕様を見ると、CPUやGPUに大きな差はなく、ストレージや3Dオーディオに違いがあることが分かる
両マシンの主な仕様を見ると、CPUやGPUに大きな差はなく、ストレージや3Dオーディオに違いがあることが分かる

VRはコロナ禍で威力を発揮する

 次のテーマは「次世代ゲーム体験 VR・AR(拡張現実)・ソーシャル」。20年10月に発売されるスタンドアローンVRヘッドセット「Oculus Quest 2」を中心に、VRの現在と未来、そこから生まれるソーシャル空間に関するトークを展開した。

 まずは自身がVRゲーム開発を手掛ける新氏が、スタンドアローンVRの魅力を力説。「ケーブルが不要なため、一気に没入度が上がる。まだ日本にはすごさが伝わっていないが、米国ではVRはすごく売れている」と、日本におけるVRの普及に期待を寄せた。

 西川氏もOculus Quest 2の魅力を解説。「画面がびっくりするくらいきれい。なのに前機種より軽量化され、値段も3万円台に下がった。これはPS5やXboxと同じ価格帯。きわめて戦略的な価格設定だ」と分析する。

スタンドアローンVRヘッドセット「Oculus Quest 2」の全機種との比較表。注目はコンソール機と同等の価格帯にしてきた点
スタンドアローンVRヘッドセット「Oculus Quest 2」の全機種との比較表。注目はコンソール機と同等の価格帯にしてきた点

 トークはVRの普及に関して、今後ソーシャル空間にも大きな影響を与えるといった話題へと広がりを見せる。「かつては技術に強い人がVRを使っていた。しかし、今はそうでない人がVRチャットなどを使い始めている。だからフェイスブックはOculusを買収した」と簗瀬氏。西川氏は「バーチャル世界では物理的な距離が無効化される。ZoomなどのWeb会議システムとは違い、顕在感・存在感も伝えられるのが大きい」と、コロナ禍でのコミュニケーションツールとしての魅力を強調した。

 こうしたコミュニケーション要素の拡大は、ゲームの未来を読み解くキーワードでもある。「代表例は『フォートナイト』。バトルするゲームなのに、たくさん人が集まりコミュニケーションの場になった」(簗瀬氏)。そして「“戦争”のために集まっているのに、なぜかそこで音楽ライブが開催され、みんな銃を持って音楽を楽しんでいた」と語る西川氏の言葉で、VR・AR・ソーシャルを巡るテーマの議論は締めくくられた。

いまではゲームとSNSが混ざり合い、そこに区別がなくなっていく。これをVRが後押しする可能性が示された
いまではゲームとSNSが混ざり合い、そこに区別がなくなっていく。これをVRが後押しする可能性が示された

2021年のゲームトレンドの展望

 最後のテーマは「2021年に向けて期待すること」。3人のゲストが、それぞれが書いたフリップを使い、期待する未来のゲームトレンドについて語った。

 新氏が挙げたのは「リアル・バーチャルを問わないコミュニケーション」だ。「今ではSNSを通じてゲームの中にいる人がコミュニケーションし、その逆にバーチャル空間にいる人がリアル空間に連絡する時代。そういったものがどんどん進んでいくことは間違いない」と、未来のゲームの遊ばれ方を提示した。

 西川氏が挙げたのは「ウルトラワイドへの対応を望む」という具体案。「通常の16対9の画面ではなく、32対9の画面を使えばプレーヤーにとっての画角が90度まで広がり、視界全体にゲーム映像が広がる。これでVRと同レベルの没入感が得られ、VRが苦手とする長時間プレイも可能になる。新しいゲーム機に期待したい」と語った。

 簗瀬氏が挙げたのは「今、想像できないものを遊びたい」という点。「ゲームクリエイターは、こういうものを遊びたいという究極のゲームが頭の中にあるが、スペックの壁などがあり、実現していない。新ハードが出るとそれが実現する可能性がある。そうやって生まれたゲームによって見たこともない体験ができるのが、新ゲーム機登場の醍醐味」と新ゲーム機がもたらす新たな体験に期待を寄せた。

 こうして、未来のゲームトレンドについて活発に意見が飛び交う番組は終了。それは、まだ見ぬゲーム体験の到来をうかがわせる、わくわく感に満ちた50分だった。

西川氏はウルトラワイドによって没入感が上がることを図で説明。VRと同じような体験が可能になると語った
西川氏はウルトラワイドによって没入感が上がることを図で説明。VRと同じような体験が可能になると語った
ウルトラワイド画面の実例。技術的には、次世代コンソール機ならば対応することは可能とのこと
ウルトラワイド画面の実例。技術的には、次世代コンソール機ならば対応することは可能とのこと

(写真提供/コンピュータエンターテインメント協会)

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