ゲーム関連を中心に視聴者、視聴時間ともに右肩上がりのライブ動画配信。若者に人気の配信者(ストリーマー、日本では「ライバー」と呼ぶサービスもある)も次々に登場しており、その影響力に注目した企業が彼らとコラボレーションするケースも増えている。ではその影響力は何で測るべきか。視聴者数でもチャンネル登録者数でもない、視聴時間だ。
インターネット上のサービスやコンテンツを評価したり、KPI(重要業績評価指標)を設定したりするときに用いる数字は多数あります。
例えば、ウェブサイトやブログなど、テキストを中心としたサービスでは昔からPV(ページビュー)やUB(ユニークブラウザー)が一般的ですし、2010年以降、ソーシャルメディアが盛んになると、フォロワー数やリツイート数、「いいね!」の数などが注目されるようになりました。YouTubeをはじめとする動画(オンデマンド配信)の世界では再生回数とチャンネル登録数が注目されます。
しかしライブ配信の世界では、これらの数字は必ずしも意味を持ちません。ライブ配信の特性上、そのストリーマーの真の実力が測れないからです。
既存の評価軸では真の実力は測れない
というのも、一度投稿すればネット上で常時コンテンツが見られるブログ・動画・ソーシャルメディアと違い、ライブ配信は配信をしているその瞬間(一般的には数時間程度)にしか視聴者が閲覧できません。リアルタイム性が高いので、PVや動画再生回数、「いいね!」数などの痕跡的・蓄積的な数字が全体的に小さくなる傾向があります。ライブ配信の中には、アーカイブとして後から見られるようにするものもありますが、最初からオンデマンド配信を前提とした動画に比べると再生回数は伸びません。
フォロワー数やチャンネル登録数といった数字も、ストリーマーの実力を測るには不十分です。フォローやチャンネル登録をしているユーザーが実際にライブ配信を見ているとは限らないためです。「フォロワーはいるけれどエンゲージメント率は低い」状態は決して珍しくはありません。
では、ライブ配信の盛り上がりはどのように計測するのでしょうか。一般的な指標としてよく使われるのは、「同時視聴者数」や“投げ銭”の金額です。人気のある配信には同時に多くの視聴者が集まりますし、その内容を評価すれば投げ銭をする視聴者も増えます。これらは従来のメディアやコンテンツにはなかった、ライブ配信特有の指標です。
配信技研ではここからさらに一歩踏み込んで、「視聴時間」に注目しています。この連載ではこれまでにコロナ禍でのライブ配信市場の伸びや、テレビなどの従来メディアではなかなか話題に上らない、ライブ配信業界の人気ストリーマーについて紹介してきました。それらを測る基準として用いてきたのも、「視聴時間」という概念です。
視聴時間とは、ライブ配信中、その配信に視聴者が滞在した時間の“合計”で表します。例えば、同じタイミングで配信を行ったストリーマーが2人いた場合、両者の再生回数が同じでも、滞在時間が長いユーザーが多かったストリーマーのほうが視聴時間は大きくなる計算です。
極端な例ではこんなケースも考えられます。同じタイミングで配信を行ったストリーマーのうち、1人は1万人の視聴者を集めましたが、視聴者の平均滞在時間は2分でした。この場合の視聴時間は2万分になります。もう1人は1000人の視聴者しか集まりませんでしたが、平均滞在時間は30分でした。この場合の視聴時間は3万分になります。集まった視聴者の数だけを見ると、前者のほうが人気が高そうですが、視聴時間で見ると、後者のほうが大きくなります。
この視聴時間はライブ配信というメディアの特性をより深く計測した数字です。視聴時間の長さは、視聴人数の多さだけでなく、チャンネルへの定着度やストリーマーへの共感度の高さといったエンゲージメントも反映するからです。このため、ライブ配信統計を発表する海外メディアでも一般的になっています。
例えば、下のグラフはオランダの市場調査会社Newzooが、19年に人気があったeスポーツタイトルの視聴時間をランキング形式で発表したものです。
視聴時間は、複数のチャンネルでライブ配信された映像が実際に視聴された時間をゲームごとに足し上げています。これによると、『リーグ・オブ・レジェンド』が非常によく見られていることが分かります。
この記事は会員限定(無料)です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー