2018年から毎年行っているゴールデンボンバー・歌広場淳さんのインタビュー連載。造詣が深いゲームやeスポーツの話を中心に、自身の本業、ライブエンターテインメントはアフターコロナ時代にどうなるかなどを聞く。今回はその第2回。
<前回はこちら>
ヴィジュアル系エアーバンド、ゴールデンボンバーの活動の一方で、総合ゲームエンタメ集団「ReMG(レムジー)」のメンバーとして、eスポーツイベントへの出演や大会への出場、動画配信なども行う歌広場淳さん。
前回の記事では、活動の拡大によって自身が感じたこととして、動画配信の難しさや、ゲームを題材にした従来の番組制作に足りなかったもの、それを踏まえてゲームやeスポーツの見せ方が分かってきたことなどを聞いた。
2回目の今回は、コロナ禍のeスポーツへの影響、さらにeスポーツプレーヤーのファンマーケティングへと話が展開する。
「見えない人」にいかに目を向けるかがテーマ
――2019年のインタビューでは、「eスポーツの魅力は下手でもいいこと。だから、自分の弱さをもっとさらけ出したい」とおっしゃっていました(関連記事:金爆・歌広場淳、eスポーツの魅力は「下手でもいい」こと)。その後、歌広場さんとゲームの関係に変化はありましたか?
歌広場淳さん(以下、歌広場) 大きいのは、20年に入って「極端に他人の存在を感じないゲームライフ」になってしまったことです。
というのも、19年12月の「Red Bull Kumite Japan 2019」(Aichi Sky Expoで開催)や20年1月の「EVO Japan 2020」(幕張メッセで開催)といった大きな大会に出場したときは、「歌広場がプレーするならちょっと見てみたい」と後ろに人だかりができていたんです。つまり、人の期待を背負っていることをひしひしと感じながら闘うことが増えていた。
ところがその後は、新型コロナウイルスの影響で試合がほとんどオンラインになってしまい、人の顔が見えなくなりました。配信している動画にコメントを付けてくれる人はいますが、視聴者数から見るとごく一部。コメントなどで声を上げてくれないと存在が見えなくなってしまったわけです。
――手ごたえが感じにくい。
歌広場 言ってしまえばテレビ出演に近いんですが、テレビと違うのは視聴者数の実数が分かること。先に「有名人がわーきゃーと言っていることが受けることもある」と言いましたが(第1回参照)、それも視聴者数が具体的に数字で見えたからこそ分かったことです。
そういうところに注目すると「ゲームが下手でも視聴者数が確実に上がる人がいる」ことが改めて実感できました。それって、やはりタレントさんとか有名人なんです。
視聴者を増やせるということは、熱心なゲームファンになるかもしれない候補者を増やせることでもあります。ゲームやeスポーツをより普及させる力を持っているともいえる。以前は「ゲームを分かっていないタレントさんが番組に呼ばれるのはなぜだろう?」と思っていた部分がありますが、やっぱり意味はあるんです。
そういう人をよく「客寄せパンダ」なんて揶揄(やゆ)したりもしますけど、ちゃんとゲームを理解したうえで喜んで客寄せパンダになってくれる人がいるなら、その人こそゲームの救世主じゃないかと思うようになりましたね。
――コメントを付けたりしない、声を上げない人を意識するようになったんですね。
歌広場 まさしくその通りです。同時に、回線の向こう側にいる声を上げない人たち、僕からは“見えない人”たちのことをどれだけ考えられているのか、そこに恐れを抱く必要もあると思っています。見えない人も含めて、見ている人を喜ばす努力をする。
これが20年のテーマの1つですね。見えない人が大多数なんですから、それを怠ると視聴者数は減る一方ですよ。