「マーケター・オブ・ザ・イヤー2020」の大賞は、日本コカ・コーラ初のアルコール飲料「こだわりレモンサワー 檸檬堂」の開発を指揮した同社CMOの和佐高志氏に決定! 後発の利点を生かしたブランディングをはじめ、「お手本」とも言えるマーケティング戦略で垂直立ち上げに成功し、定番商品にまで昇華させた点を評価した。

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 イノベーションを起こし、ヒット商品を生み出すのは企業ではない。人である──。日経クロストレンドは2020年10月9日、新市場を創造した人や画期的なビジネスモデルを構築した人などを表彰する「マーケター・オブ・ザ・イヤー2020」の大賞を決めた。

 マーケター・オブ・ザ・イヤー2020として選出した5人(5商品・サービス)の中から、大賞として日本コカ・コーラ初のアルコール飲料「こだわりレモンサワー 檸檬堂」をヒットに導いた同社CMO(最高マーケティング責任者)の和佐高志氏を選出した。

 選考条件や評価項目は、第1回を参照。各賞は以下の通り。

【大賞】

「こだわりレモンサワー 檸檬堂」
日本コカ・コーラ 最高マーケティング責任者
和佐 高志氏

【優秀賞】

「ナイキ ヴェイパーフライ シリーズ」
ナイキジャパン ブランドマーケティング シニアディレクター
バーバラ・ギネ氏

『鬼滅の刃』(集英社・アニプレックス・ufotable)
アニプレックス プロデューサー(企画制作第1グループ 企画制作部4課 課長)
高橋 祐馬氏

「ゴキブリムエンダー」
大日本除虫菊 マーケティング部 課長
奥平 亮太氏

「バーミキュラ フライパン」
愛知ドビー 副社長
土方 智晴氏

日本コカ・コーラCMO和佐高志氏が登壇します!
日本コカ・コーラCMOの和佐高志氏が、11月16日、17日に行われる「日経クロストレンド FORUM 2020」に登壇します。オンラインでの講演なので、どなたでもご視聴が可能です(無料登録制・先着順)。お申し込みはこちらから!

審査員4人の評価は?

 マーケター・オブ・ザ・イヤー2020の審査員を務めたのは、クー・マーケティング・カンパニー代表取締役の音部大輔氏、早稲田大学大学院 早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄氏、かげこうじ事務所代表・クリエイティブディレクターの鹿毛康司氏、プリファード・ネットワークス執行役員CMOの富永朋信氏。4人の講評は以下の通り。

クー・マーケティング・カンパニー代表取締役 音部 大輔氏
コロナ禍でも、固有で有用な資源をうまく見いだして活用することは、ブランドの成長や市場創造を実現するために共通する項目と言えるだろう。「ナイキ ヴェイパーフライ シリーズ」は、蛍光ピンクの可視性を資源として生かし、大会をメディア化した点が高評価。『鬼滅の刃』は、アニメ化をきっかけにアニメ好き以外に広がったファンの裾野を資源に、コラボ商品が「会話を促す社交の道具」となる環境を生み出した点などが秀逸。「こだわりレモンサワー 檸檬堂」は、価格競争が激しい市場で約50%も引き上げた単価をも資源として市場創造をしている。「ゴキブリムエンダー」は、ターゲットを絞ることで資源の高効率な投下を実現できて素晴らしい。
早稲田大学大学院 早稲田大学ビジネススクール教授 入山 章栄氏
「こだわりレモンサワー 檸檬堂」は、CMO(最高マーケティング責任者)が力を発揮した好例。日本では王道のマーケティングができるCMOが少ない中、それをやって成功し、やればしっかり結果が出ると知らしめた功績は大きい。「バーミキュラ フライパン」は、ものづくりのあるべき姿を体現している。日本のものづくりの最大の課題は、機能訴求で価格競争に陥りがちなプライシング。地方で技術力のあるところが、ブランド価値を高め、分かってくれる人にきちんとした価格で買ってもらうという、これからの日本が目指す方向と言える。『鬼滅の刃』も画期的。アニメから火が付いたという意味では、アニプレックスがやったことは相当すごい。こちらも、今後のメディアミックスはこうあるべきという形を生み出した。
かげこうじ事務所代表・クリエイティブディレクター 鹿毛 康司氏
「こだわりレモンサワー 檸檬堂」は、缶チューハイが手軽さやアルコール度数、利益率などの戦いになっていたところに、王道の「おいしいもの」という本質価値に持っていったところがさすが。ネーミングも含め、後発だからこそ真っ正面から見事に勝負している。『鬼滅の刃』は、コンテンツの世界観に合わせたアニメや音楽、それを盛り上げるタイミングなど、すべて計算されたプロデュースがあった。映画やイベントなど、従来と同じツールを使っても販促の組み立て方に新味を持たせた点が素晴らしい。「ナイキ ヴェイパーフライ シリーズ」は、機能とスポーツと生活を結び付けるシンボルをつくった点が見事。
プリファード・ネットワークス執行役員CMO 富永 朋信氏
「ゴキブリムエンダー」のマーケティングには非常に感心した。商品のネガティブポイントに愚直に向き合い、それを解決する商品を出し、かつコミュニケーションも、おそらくは潤沢ではないであろう予算の制約下で、関心を引く仕掛けが盛り込めている。商品開発のスタートから広告まで全く隙がない。「バーミキュラ フライパン」も商品のリポジションに成功した好例。一般にコモディティーになってしまうと、もう一度高いポジションに上げることは難しい。フライパンで言えば1万円を超える商品は冒険だったと思う。「ナイキ ヴェイパーフライ シリーズ」は、広告だけに依存しないコミュニケーションデザイン、商品特性が合致し効果を上げた。同時にそれはナイキのブランドにも非常に合っていて、商品の認知と流通に貢献している。
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