リオ五輪2016大会閉会式での東京五輪2020へのフラッグハンドオーバーセレモニーのAR映像や、Perfumeの近未来的な映像演出など、常に見る人を驚かせてきたクリエーティブ集団・ライゾマティクス。設立15年周年となる2021年、東京都現代美術館で「ライゾマティクス_マルティプレックス」展が開かれている。今話題の「NFT」をテーマにした作品を発表した理由やテクノロジーとアートの未来について、ライゾマティクスを主宰する真鍋大度氏に聞いた。

真鍋大度氏。東京を拠点に活動するアーティスト、インタラクションデザイナー、プログラマー、DJ。 2006年にRhizomatiks(ライゾマティクス)設立
真鍋大度氏。東京を拠点に活動するアーティスト、インタラクションデザイナー、プログラマー、DJ。 2006年にRhizomatiks(ライゾマティクス)設立

 ブロックチェーンの仕組みを使って、デジタルで制作したアート作品などを売買する市場が大きな盛り上がりを見せている。これまでデジタルで作られたアートには価値がほぼ付かなかったが、NFT(ノンファンジブルトークン:非代替性トークン)と呼ばれるデジタル資産とひも付けることで、作品の唯一性や所有権が担保されるようになったためだ。「ライゾマティクス_マルティプレックス」展では、そのNFTの取引状況をテーマにした作品が出展され、話題を呼んでいる。

――『Gold Rush-Visualization+Sonification of Opensea activity』(2021) 以下、『Gold Rush』を制作した理由を教えてください。

真鍋大度氏(以下、真鍋) 20年夏ごろからNFTで価値を担保されたデジタルアートであるNFTアート(暗号化されたアート作品)を売買する動きが目立つようになって、定点観測していました。ちょうど21年3月に「Beeple(ビープル)」として知られるマイク・ウィンケルマン氏の作品『エブリーデイズ:最初の5000日間』が、英競売会社クリスティーズのオークションで、約75億円で落札されるという出来事があって、一気に市場がバブルの様相を帯び始めました。そこでエブリーデイズが落札された前後24時間の取引状況を分析、可視化する作品にしたら面白いのではないかと制作したのが『Gold Rush』です。

 基にしているデータは、エブリーデイズが落札された時の前後24時間にOpenSeaというNFTのマーケットで発生した出品、入札、取引などのイベントです。イベント発生時に扱われた画像の特徴を抽出して、tSNEというアルゴリズムを用いて2次元、3次元空間にマッピングして直感的に何が起きているか分かるように可視化しました。映像にするとデータの背後にある人の意思までもが感じられるようになります。

 NFTはニュースなどでも取り上げられるようになり、多くの人が耳にしたことがある言葉になっています。でも、実際に何が起こっているのか分かっている人は少ないでしょう。だから『Gold Rush』を通して、この異常現象を俯瞰して眺めるようなことができたらいいかなと考えました。

――今のNFTのマーケットをどう見ていますか。

真鍋 NFTの仕組みは購入者にもアーティストにも参入障壁が高いように思います。今の時点で購入しているのは、もともと暗号資産やその保管場所であるウォレットを持っている人がほとんどだと思うので、実際に普及するのはこれからではないでしょうか。ブロックチェーン自体はインターネットと同様に今後もずっと使われるだろう根幹的で重要な技術で、これから新しい仕組みを作っていくでしょう。

 21年4月には、ライゾマティクスのNFT作品を販売するオンラインマーケット「NFT-Experiment」(エヌエフティ-エクスペリメント)を開設しました。ライゾマティクスのデジタルアートと、音楽ユニット・Perfume初のNFTアートを6月から販売スタートしています。通常、アーティストは、どこのプラットフォームに作品を出品しようかと考えるわけですが、僕たちはプラットフォーム自体を作ろうと構想しました。自分たちで運営すると、他のプラットフォームがどんなビジネスモデルか、プロモーションやマーケティングをしているかが分かり、面白さが見えてきます。まだNFTは黎明期でこれから伸びしろがあるように感じますね。

映像の作品名:『Gold Rush-Visualization + Sonification of Opensea activity』(2021) 会場の展示名:『NFTs and CryptoArt-Experiment』(2021)
映像の作品名:『Gold Rush-Visualization + Sonification of Opensea activity』(2021) 会場の展示名:『NFTs and CryptoArt-Experiment』(2021)
「ライゾマティクス_マルティプレックス」展示風景(東京都現代美術館、2021年) photo by Muryo Homma(Rhizomatiks)

――ライゾマティクスの作品やプロジェクトを通して、やろうとしているのはどんなことですか。

真鍋 僕たちがやっているのは、アートでなければできない「実証実験」です。新しいテクノロジーやシステムが出てきたときに、社会を変えるかもしれない、問題になるかもしれないということをいち早く作品に落とし込んで、検証するのが僕たちのメディアアート。自分たちの捉え方を表現するということより、見た人に関心を持ってもらったり何かに気付いてもらったりするような「開かれたアート」を活動当初から模索してきました。

 例えば、ドローンが出てきたときも、ビットコインのときも、僕はまずそれらをどういうふうに応用できるだろうかと考えました。ドローンは、すぐにダンスのプロジェクトに使おうと思いました。ビットコインでは、取引データを使ってそれを音と映像で可視化、可聴化させて、自動取引まで行うという『chains』 (2016)という作品を作りました。作品ができた時は、まだ暗号資産に対する法律はまるで整備されていませんでした。

 現状では、NFTのシステムもまだ法律が整備されていなくて、色々な抜け道がある。だから、あえてそうした「穴」を見つけて問題提起していきたい。第一弾として現状を伝えることを考えた作品が『Gold Rush』で、これからバージョンアップすることも考えています。議論をするのではなく、実際に作品を作って検証する。議論は作品が出来上がってからなんです。

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