「右へ回すとシャープペンシル、左へ回すとボールペン」。一世を風靡した「シャーボ」(ゼブラ)の印象的なテレビCMから44年。2020年11月に発売された「シャーボNu(ニュー)」は、従来の多機能ペンの“常識”を覆し、利用者の潜在的な不満を解消。シャーボブランドの販売本数を前年比150%に押し上げた。
※日経トレンディ2021年6月号の記事を再構成
1977年に発売されたシャーボは、「回転式多機能ペン」の代名詞とも言える存在だ。発売30周年を迎えた2007年には、ボディーや替え芯の組み合わせをカスタマイズできる「シャーボX」でシリーズを刷新。シェアを大きく伸ばすことに成功したが、「40代以上の男性には知名度がある半面、20~30代にはあまり認知されていないという課題を抱えていた」と、新モデル「シャーボNu」の開発に携わったデザイナーの牧昌太氏は明かす。
若年層を獲得するアイデアを模索する中で行ったアンケートで浮上したのが、「多機能ペンユーザーの約80%がシャープペン機能を頻繁に使っている」ということ。そして、「多機能ペンはシャープ芯を補充しにくい」という潜在的な不満だった。
多機能ペンは内部に複数の細いペン軸が円形に並んでいる。ペンを分解しなければ内部のシャープメカ(シャープペンシル部)の芯を補充できないことは半ば常識だった。「筆記具の開発に関わってきた我々も『多機能ペンとはそういうもの』と思い込んでおり、アンケートの結果にはある意味驚かされた。ただ、こうした不満点を解消していけばユーザー拡大につながる新しい価値を提供できるのではと気付き、開発の方向性が定まった」(牧氏)
多機能ペンのシャープペンをいかに使いやすくするか。解決の糸口となったのが、過去に“お蔵入り”になったアイデアだった。
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