セカオワ「RPG」の成功体験が糧に

 ジョイミューで貫く信念には、保本氏がこれまでのプロデューサーとして培ってきた経験が大いに生きている。代表的な例として、前述したセカオワの「RPG」の話を聞いた。

 「実は当初アレンジを聴いてもらった時、セカオワのメンバーからもレコード会社からも、『アバンギャルドだ』と反対されたんです。唯一、ボーカルのFukaseだけが、『このアレンジでやりたい』って言ってくれて、ヒットした。あのヒットによって『ファンタジー感のある曲を作りたい』となったときに、みんなが『RPG』をまねするようになったんです。自分のやりたいことを押し通さないと後悔するなと思いましたし、全員に好かれる必要はなくて、当時のFukaseのように誰か1人でも味方がいたら状況はひっくり返せると実感しました。

 それ以降、様々なアーティストからも『保本さんは実験するのが好きだそうなんで、とにかくやりたいようにやってください』と言われるようになりました。その後、ゆずの北川(悠仁)君から、『僕らが歌ったら何でもゆずになるので、好きにやってください。その代わり中途半端なことだけはしないでほしい』と言われて作ったのが、『雨のち晴レルヤ』という曲でした。それもヒットしてくれて。そうやって腹をくくることが大事なんだっていうことは忘れずにやっていきたいなと思ってます。

 僕がサウンド演出を手掛けた、セカオワの『炎と森のカーニバル』というライブでは、巨大な樹をステージ上に立てました。スタッフは高さ20メートルが限界だと言ったんですけど、Fukaseは30メートルじゃないと意味がないと言ったんです。散々せめぎ合いがあった結果、バルーンで樹をつり上げて30 メートルの高さにした。たかだか何メートルかの差だけど、客席からの見栄えが全然違うんです。あの壮大さによって、お客さんは日常から切り離されたファンタジーを強く感じることができた。自分の中で確信があれば、反対されたとしても押し切る強さはすごく大事だと思うんです。

 よくワンマン社長って揶揄(やゆ)されたりしますけど、ワンマンの強さがないと人を引っ張っていけないのも事実なんですよ。Fukaseは自腹を切ってでも、30メートルの樹を作るって言ったし、僕もジョイミューは全部自分たちのお金でやっています。そうでもしないと人と違うところには到達できない気がしてるんですよね。まだ今は種まきの時期で、ジョイミューは全然利益にはなっていませんが、やがて実がなるよう、足を止めないことが大事だと思っています」(保本氏)

(写真/タナカヨシトモ)


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