『朝が来る』は映画を3本同時に撮っているようだった

――プライベートでは、高校をこの3月に卒業したばかり。陰のある繊細な役を演じることも多い蒔田だが、当人は明るさ満点といった印象が強い。

蒔田 初めの1年間だけ、普通の高校に通っていました。朝起きて高校に行ったり、文化祭や体育祭といったものに参加したり、高校生の役を演じることが多いので、いわゆる高校生活がどういうものなのかを体験できたのは良かったと思います。高校の一番の思い出は、すごく大きな公園が近くにあって、そこで同級生たちとグダグダと過ごしたことですかね。何か特別なことをするわけじゃないけど、高校生だからこそ何もしないで公園で過ごせることの醍醐味を味わえたというか。

 この4月からは学生という枠が自分から無くなってしまったので、大人の仲間入りだなと思って気を引き締めていこうと思っています。年齢的にはできることが増えるので早く大人になりたいんですけど、色々と悩んでしまったりするのは苦手なので、気持ち的には子供のままでいたいんです(笑)。あまり考え込まない、明るく楽しい大人になりたいです。

 役柄を引きずったことは一度もないですね。「思うように演じられなかったな」と思って落ち込むこともあるんですけど、いつまでももやもやしていても仕方ないので、「次はこうしよう」って反省して寝ると、翌日は前向きな気持ちになります。飼っている犬たちに癒やされて全部忘れさせてくれるっていうのもありますし、周りの人に「今日こういうことがあったんだよね」って話して吐き出してから寝ると忘れます(笑)。

――これまでで一番印象に残っている役は、やはり日本アカデミー賞新人俳優賞などを受賞した『朝が来る』のひかり役だという。14歳から20歳まで、6年間を演じた。

蒔田 3本くらいの映画を同時に撮ったみたいな感覚でした(笑)。撮影前は役を背負わなきゃっていう気持ちもあってしんどいところはあったんですけど、撮影が始まったら身を任せるように演じられた気がしましたね。<お芝居>っていう感じじゃなくて、ひかりとして生活していたというか。これまでと違うお芝居ができた手応えがありました。

 ひかりは自分の気持ちは後回しで、人の気持ちを一番に考える子。例えば、仲良くなった友達に借金の肩代わりをさせられたら普通は恨んでしまうと思うんですが、一緒に過ごした楽しい思い出が残っているから、その友達が残していった服を大切に着る。自分がいろんなことを経験したように、みんなにも色々あるんだと考えるというか。ひかりのそういう優しさや、強さなのか、弱さなのか分からない部分は最後まで大事にしたいなと思いましたね。どんなに傷ついて、やさぐれてしまったとしても、ひかりにとって一番大事なその部分が無くなったら、もうひかりじゃなくなっちゃうと思いながら演じていました。

 この作品が思ってもみなかったくらい幅広い層の方に見ていただけたことはすごくうれしいし、賞という目に見える形で評価してもらえて報われた感じはありました。もちろん賞が欲しくてやっているわけではないので、ラッキーなおまけみたいな感じなんですけど(笑)、受賞をきっかけに、より多くの人に作品を見てもらえることになるんだということを知りました。授賞式というものを経験してまたこの舞台に戻ってきたいと思ったので、次は主演でそういう評価がもらえるように頑張りたいです。

ヒットをつくる人の素顔

最近ヒットしているものは?

20年の春の緊急事態宣言の時に、初めて作品が延期されたり、中止になったりすることを経験しました。それで新しいことを始めようと思って、水彩画を描き始めたんです。今でも休みの日に描いていますね。女の子の絵を描くことが多いです。

座右の書は?

13、14歳くらいの時に母に薦められて初めて読んだ漫画『ホットロード』(集英社)が大好きです。最近自分で買ってまた読んだんですけど、主人公たちは子供でも大人でもないようなはざまの年齢で。それが今の自分に重なる部分があって、色々と考えさせられます。

(写真/洞澤 佐智子=CROSSOVER Inc.)


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