
ホリプロデジタルエンターテインメント(東京・目黒)は、大手芸能事務所・ホリプロが2018年に設立したデジタル特化型子会社。その創業で中心的役割を担い、20年6月に29歳の若さで社長に就任したのが、鈴木秀氏だ。女性TikTokerでフォロワー数日本一となった「景井ひな」ら同社独自の「芸能人2.0」への取り組みと、その先に見据える「芸能人3.0」への成長戦略とは。
ホリプロデジタルエンターテインメント 社長
芸能人のスキルを持つインフルエンサー「芸能人2.0」
「スマホからスターを」をテーマにインフルエンサーなどのタレントデザイン事業を手掛けるホリプロデジタルエンターテインメント。所属タレントは、2020年11月現在で17人(バーチャルタレント1人含む)。その活動を10人のスタッフとともに支えているのが、社長の鈴木秀氏だ。
「親が病気してしまったりして、家庭環境が良くなくて、中学生の頃から一人暮らしをしていました。そのときにお金に困って。おなかがすいたから冷蔵庫をあさるくらいの感覚で、自分で仕事を作ってこなすということを始めました」
14歳で起業し、輸入販売のECサイトを運営。高校時代には企業のSEO(検索エンジン最適化)対策を個人で請け負うようになり、大学生になると数万人のフォロワーを持つインフルエンサーになった。そして大学院時代に動画共有コミュニティーサイト「MixChannel」の立ち上げに参加する。
しかしそこでは問題も発生した。動画を投稿してファンを集めることに没頭しすぎて、不登校になる利用者が増えてしまった。「親御さんに会いに行くと、『動画のために壁に穴を開けたり、夜中に大声で撮影をしたりしていて困っている』と。自分がその子たちの人生と家庭を壊しているんじゃないかという気持ちになって、彼らを動画で食べていけるようにしてあげられないかと考えました」。
こうして24歳のときにYouTuberプロダクション「VAZ」の創業メンバーとして参画し副社長に。多くの人気YouTuberやインフルエンサーを輩出するが、2年後に辞任してニートとなる。そのときに拾ってくれたのが、「VAZ」と資本関係のあったホリプロだ。
「ホリプロは『芸能人』という人を育てる会社。僕も人を育てることに興味がありましたし、逆に育ててほしいという甘えもあって、『アルバイトでも何でもいいので』と相談に行きました。最初はアルバイト契約で、仕事はタレントのSNS周りのサポート。1カ月前までベンチャーの取締役でチヤホヤされていたので、正直、プライドが壊れていくということが一番の業務だったかもしれないです(笑)」
その頃、社内でデジタル分野のタレント育成に力を入れようという動きがあり、鈴木氏に白羽の矢が立った。プロジェクトメンバーに選ばれた3人で、これから必要とされるタレント像を話し合った。
「SNSで活躍できるタレントは、すでに『インフルエンサー』という言葉で出てきていました。インフルエンサーは高い影響力を持っていますが、自分が好きなこと、興味のあることを発信することが中心。そこに芸能人の『伝える』『演じる』といったスキルを掛け算すると、新しい形のタレント『芸能人2.0』にアップデートできるのではないかと考えました。
また、今の芸能人やインフルエンサーは、テレビや映画に出演したり、商品のPRをしたりしないと、お金を得られない。そのようなクライアント依存型ではなく、直接ファンにサービスや体験を提供して対価を得られるようなタレントを育てていきたいと思いました」
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