2021年のヒットをつくる人

マスクメーカーとしては知名度が低かったアイリスオーヤマがこの夏、国内最大級のマスクメーカーに躍進した。その立役者が6年前からヘルスケア事業部の事業部長を務める岸美加子氏。単なる増産だけでなく、息がしやすい「ナノエアーマスク」を6月に投入し、多くの人の息苦しさを軽減した。

岸 美加子 氏
アイリスオーヤマ
ヘルスケア事業部 事業部長

青森県出身。八戸工業高等専門学校卒業後、化学関連企業を経て2001年にアイリスオーヤマに入社。ペット用品、日用品、飲料などの商品開発に数多く携わり、14年から現職

 まだ記憶に新しい“マスクバブル”は、新型コロナウイルス感染症の患者が国内でも出始めた2020年1月下旬から始まった。ドラッグストアやコンビニでは使い捨てマスクが入手困難になり、街頭で販売された輸入マスクにも人々が殺到。普段は1枚当たり10円前後で販売されることもあった不織布マスクが、一時は同80円超に高騰した。そんな中、マスク供給で質・量とともに存在感を示したのが、宮城県の生活用品メーカーであるアイリスオーヤマだ。

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 まず量の面では、20年5月に宮城県角田工場の設備を増強。中国の2拠点と合わせて、最大で毎月2億3000万枚を供給できる体制を整えた。20年3月に計画していた月6000万枚(輸入を含めて1億4000万枚)という生産計画を大幅に上回り、一躍、国内最大手のユニ・チャームに匹敵するマスクメーカーになった。

アイリスオーヤマの宮城県角田工場。30億円を投資し、11月からは毎月1億5000万枚を生産する
アイリスオーヤマの宮城県角田工場。30億円を投資し、11月からは毎月1億5000万枚を生産する

 そして同社は、マスク着用時の「暑さ対策」でも存在感を示した。緊急事態宣言が解除される20年5月末頃から、国内ではマスク着用による熱中症のリスクが話題になり始めた。マスクを着用すると、生地自体が顔の熱で温められる上、吐いた息が滞留しがちなため暑苦しく感じる。同じころにスポーツ用品メーカーなどが投入した布マスクなら呼吸はしやすいが、ウイルスの拡散を防ぐ性能は落ちる。

 そこで、ウイルスなどの捕集性能と通気性が両立されたマスクとして注目されたのが、同社が同6月に発売した「ナノエアーマスク」。特殊ナノファイバー加工を施した通気性のある中間層(フィルター)の採用により、着用時の口元の温度上昇を従来製品の約半分に抑えた不織布マスクになる。これを開発したのが、アイリスオーヤマ ヘルスケア事業部の岸美加子事業部長だ。

 アイリスオーヤマでは、事業部長であっても自らが積極的に商品企画を立てる。これは同社が、「発売3年以内の新商品で売り上げの5割以上を上げる」という目標を掲げているためだ。ヘルスケア事業部でも「製品開発にあたっては事業部長自らアイデアを入れ、売り上げをどう伸ばすかの将来設計を立てている。そのため、常に50~60個のネタを仕込んでいる状態」(岸氏)という。

「ナノエアーマスク」を装着する岸事業部長
「ナノエアーマスク」を装着する岸事業部長