2021年のヒットをつくる人

2020年7月1日に設立した新会社・日本IBM デジタルサービス(東京・中央)の社長に就任したのが、39歳の井上裕美氏。数千人からなる社員を束ね、ITプロフェッショナル集団の旗振り役を担う。若⼿⼥性社⻑は⽇本企業のDXをどう⾒ているのか。同社の取り組み、彼⼥のリーダー像を聞いた。

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井上 裕美 氏
日本IBM デジタルサービス社長
2003年日本IBMに入社し、システムエンジニアとして官公庁のシステム開発を担当後、さまざまなプロジェクトでリーダーを務める。19年、ガバメント・デリバリー・リーダー、20年日本IBMグローバル・ビジネス・サービシーズのガバメント・インダストリー理事に就任。20年7月より現職。保育園児と小学生の2人の娘の母でもある

 コロナ禍の2020年7月1日、日本IBMは静かに、大きな一歩を踏み出した。日本IBMサービス(ISC-J)、日本IBMソリューション・サービス(ISOL)、日本IBMビズインテック(IBIT)の3社を合併、日本IBM デジタルサービス(以下、IJDS)を設立した。

 それぞれが製造業や金融業に特化することで、知見やスキル、アセットなどを蓄積してきた各子会社。これらが融合することで、顧客のDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させる、ITプロフェッショナル集団が誕生することになる。

 数千人もの規模となるIT専門集団の新会社を束ねるのが、39歳の井上裕美氏だ。現在、小学生と保育園児を持つ2児の母でもある井上氏は、システムエンジニアとして日本IBMに入社。主に官公庁を担当し、11年には官公庁デリバリー部長に就任。それ以降も官公庁、自治体、教育関連などのプロジェクトで、プロジェクトマネジャー(PM)やプロジェクトオーナー(PO)として、大規模な社会インフラの変革などをまとめ上げてきた。大抜てきにも見えるが、着々と実績を積み上げてきた必然の人事だと言える。

 コロナ禍で日本企業のDXは急速に進んだ。というより強制的にデジタル化へのシフトを迫られた。コロナ禍で「どんなメソッドでどんなツールを使えば、お客様は良い成功体験を迎えられるのか、本気で話す機会が増えたように思う」(井上氏)。例えば、リモートワークの必要性。緊急事態宣言でリモートワークが推奨される中、「リモートに移行できない」とはなから諦めるのではなく、リモートにするのであればどのツールやメソッド、方法論でやるのか、これらを真剣に考え、かついち早く決断しトライアンドエラーを繰り返す。こういったスピードが一気に加速したという。

 新会社の強みは、「社会インフラとなる基幹系と先進テクノロジーの両輪で、DXを支援する仕組みがあること」だと話す井上氏。では、DXを顧客に提供する側のIJDSは、社内でどのような取り組みを実践しているのか。オンライン上で円滑なコミュニケーションを図るために、意識的に行っていることが3つあるという。

IBMデジタルサービス社長 井上裕美氏が登壇します!
IBMデジタルサービス社長 井上裕美氏が、11月16、17日に行われる「日経クロストレンド FORUM 2020」に登壇します。オンラインでの講演なので、どなたでもご視聴が可能です(無料登録制・先着順)。お申し込みはこちらから!

「一口DX」で情報共有

 1つ目は、100%顔を出して話すこと。複数名が参加するオンライン会議であっても、顔出しせず音声だけで行っている企業もあるだろう。「(オンラインでは)相手が理解しているのか、共感しているのかが分かりづらい」(井上氏)ため、必ずカメラをONにして会議に臨むという。

 2つ目は、感謝をきちんと言葉や文字にすること。平時、出社が当たり前だったころは“背中で語る”という文化があったが、背中を見せられなくなった。そこでオンラインツールを駆使して、感謝を伝えられる仕組みを整えているという。「コロナ前からツール自体はあったが、使おうという機運が一層加速した」(井上氏)

 この仕組みは、ブルーポイントと呼ばれている。例えば何かしらシステムトラブルが起きたとき、復旧するのに時間と労力がかかるにも関わらず、復旧に関わった人はあまり知られない。そういったことが当たり前の世界観にならないように、復旧に携わった人に対して「現場の人が一番大変だったよね。お疲れさま。本当にありがとう」という感謝のコメントや、どう復旧させたのか知見を共有する場を設けている。

 「うれしかったのは、IJDS内ではおめでとう、ありがとうのコメントが毎度続くが、IBMグループ全社からも見ることができるので、本社のシステム管理部や営業部からも声が届くこと。まさに“枠を超えた”という瞬間。あくまでツールでしかないが、見える化が加速できるのはオンラインならではの事象」と井上氏は胸を張る。

 3つ目は、「一口DX」。DXにまつわるニュースやトピックをデジタル事業部のメンバーが拾い上げて、1本のトピック当たり5~10秒程度で読めるようサマライズし、コラボレーションツールであるSlack内のチャネルで発信しているという。新聞や雑誌などを見ずとも、最低限大事なDXトピックはここでチェックできるというわけだ。

 その他にもslack内で、情報共有が全社規模で活発に行われている。業界チャネルでは今日のニュースが発信され、「テクニカルな面でこのツールは良かった」「この技術ってどうでしょうか?」といった投稿があり、知らない部署の社員が返事をくれる場合もあるという。

 オンラインが主流になって、人と人とのリアルな関係性が失われたと言われている。だがIJDSでは、むしろDXを生かすことで、今まではつながらなかった社員同士の距離が近づいている。

コロナ禍で会社立ち上げのときから、オンラインで社員とコミュニケーションを図る
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