若手にも積極的にチャンスを与える

 ヒットの継続には、若手の成長が欠かせない。瀬戸口氏は「誰でも登れる山ではなく、自分にしか登れない山を登れ」と後輩に伝え、日々応援している。「苦労して登った山には絶景が待っているし、苦労して見た景色が今後の自分を支えてくれる」と考えているからだ。

 現在TBSのドラマ枠は、火曜日午後10時、金曜日午後10時、日曜日午後9時の3枠がメイン。日曜日は「明日からがんばろう」という気持ちにさせる王道ドラマを配置するなど、内容面のバランスを取っている。7月期は、内容だけでなく制作陣のバランスを考えて若手の育成にも成功した。

 実は「私の家政夫ナギサさん」は、TBSスパークルの若手・岩崎愛奈氏が初めてメインでプロデュースした作品。編成担当の松本友香氏は20代だ。「絶対的エースの『半沢直樹』と脂の乗っている『MIU404』の制作チームと同クールだったことは大きいですが、若手チームのチャレンジに1枠使うことができた。それが成功につながった」と振り返る。「私の家政夫ナギサさん」のスタッフは“絶景”を見ることができたはずだ。

若手スタッフがフルスイングで制作した「私の家政夫ナギサさん」。21年1月13日にDVD&Blu-rayが発売される(発売元/TBS、発売協力/TBSグロウディア、販売元/TCエンタテインメント) (C)四ツ原フリコ/ソルマーレ編集部 (C)TBSスパークル/TBS
若手スタッフがフルスイングで制作した「私の家政夫ナギサさん」。21年1月13日にDVD&Blu-rayが発売される(発売元/TBS、発売協力/TBSグロウディア、販売元/TCエンタテインメント) (C)四ツ原フリコ/ソルマーレ編集部 (C)TBSスパークル/TBS

 また、若手には自身の体験から「俯瞰(ふかん)して客観視する能力」を身に付けてほしいという。これは前述の企画と世の中の接点づくりにも通じるものだ。

 瀬戸口氏は、昔からTBSのドラマが好きで「いつか自分にしか作れないドラマを作り、自分の生きた証しを残したい」と熱い思いを抱いて入社した。しかし入社3年目に制作局から編成局に異動を命じられた。「もう少しで深夜枠ならドラマを作ることができるかもしれないというタイミングで異動を命じられた。あの頃は『なんで編成?』と社会人反抗期になった」

 しかし、ドラマの再放送枠を決定する仕事を担当するようになって編成の楽しさを知った。加えて、社内で番組作りに関わるさまざまな業務を担当する人々との仕事を経験する中で、番組作りを俯瞰し、客観視できる能力が備わっていった。結果、制作に戻ったときに、すぐに日韓共同制作ドラマ「フレンズ」のプロデューサーを任されることになった。

 「編成と制作の両方を経験してよかったと思う。編成にいた頃、1つの番組に対しこれだけの人がこれだけの熱量を持って接しているということを学べたし、他局の情報やマーケティング活動を通じ、TBSがどう見られているかも知ることができた。この経験は間違いなく、作品作りに役立っている」

 若手や後輩には自身の持っているノウハウや人脈は隠すことなく提供しているという瀬戸口氏。「TBSは人とのつながりという財産をなかなか後輩に引き継がない部分があったが、それはいかがなものかと考えていたので、できるだけ僕の持つ人脈を後輩に渡すようにしている。今後はそれをTBSの文化として根付かせたい」と話してくれた。