AIとスタイリストが協働するEC 悩める女性の救世主が描く絵図(画像)

コロナ禍で多くのアパレルが苦境に陥る中、パーソナルスタイリングの要素を取り入れたファッションEC「DROBE」(ドローブ)が好調だ。2020年3月の本サービス開始以来、売り上げは毎四半期2.3倍のペースで伸長。会員数は2万5000人を突破した。AI(人工知能)とプロのスタイリストの力を合わせ、服への悩みに寄り添うサービスが、ECになじみのない層にも受け入れられた形だ。山敷守CEOにアイデアの原点を聞いた。

山敷 守 氏
DROBE CEO
東京大学在学中に学生向けSNS立ち上げなどを経験。卒業後、2010年にディー・エヌ・エー(DeNA)に入社し、新規事業開発に従事。16年にBCGデジタルベンチャーズ日本拠点に立ち上げフェーズから参画し、複数企業との新規事業開発に取り組む。19年4月にDROBEを設立

 DROBEは130以上のブランドから15万点以上の商品をラインアップしたファッションEC。ビームス(東京・渋谷)やフランドル(東京・渋谷)、トゥモローランド(東京・渋谷)など、大手アパレル企業も自社ブランドの商品を出品している。

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 特徴はその販売方法だ。同サービスでは顧客にあらかじめ服の好みやライフスタイル、体形など70項目に及ぶアンケートを実施。その結果に基づき、独自の「スタイリングAI」とプロのスタイリストが顧客に合いそうな商品を選んで送付する。顧客は手元に届いた商品から気に入ったものだけを購入し、残りは返品できる。購入した服、買わなかった服の履歴やフィードバックは次回以降の商品選定にも生かされ、より自分好みの服が選ばれるように情報がブラッシュアップされていく仕組みだ(関連記事「AIとスタイリストが似合う服を提案 アパレル通販の不安を解消」)。

会員になると、1カ月、2カ月、3カ月のいずれかの間隔で、スタイリストが選んだ服やバッグ、靴、小物などが届く。代金は、購入する商品の合計金額とスタイリング料として1回当たり2900円(税別、初回無料)
会員になると、1カ月、2カ月、3カ月のいずれかの間隔で、スタイリストが選んだ服やバッグ、靴、小物などが届く。代金は、購入する商品の合計金額とスタイリング料として1回当たり2900円(税別、初回無料)

 商品を選ぶ過程にAIを組み込んでいるが、これはあくまでも補助的な存在。15万点を超える中から顧客データに沿う商品を抽出し、スタイリストに提示するのが役割だ。つまり、最終的に商品を選ぶのはスタイリスト。同サービスを運営するDROBE(東京・渋谷)の山敷守CEOは、「コーディネートや体形などの悩みに寄り添えるのは接客経験も豊富なスタイリストの力。商品を検討する際、スタイリストに質問もできるので、ネット経由でも納得のいく買い物ができる」と言う。

 この特徴は、ファッションECをすでに活用している層はもちろん、新規の顧客層の取り込みにも奏功した。山敷氏によると「一般的なファッションECの顧客層は20代が中心なのに対し、DROBEは30~40代。ECを使ったことがない人、商品数が多いECでは何を買っていいか分からないという人の利用も多い」。

ファッションはお金に次ぐ悩み

 山敷氏がDROBEのアイデアを思い付いたのは、DeNAでの新規事業開発などを経て参画した、BCGデジタルベンチャーズ時代のことだ。ただ当初、起業の意思はなかったという。

 「大学在学中に学生向けSNSを立ち上げた経験があり、資金や人材の確保などベンチャーの難しさも感じていた。卒業後、DeNAに入社したのは、自分でやることにこだわらず、企業の中で大きな事業を生み出してみたいと考えたから」と山敷氏。DeNAでは後にミラティブ(東京・目黒)を創業する赤川隼一氏らと新規事業立ち上げを手掛けるなど、経験を積む。その後、BCGデジタルベンチャーズに移り、企業のデジタル事業開発にかかわっていた。

 気持ちが変わったのは、エスノグラフィックリサーチ(行動観察調査)の一環で保険や医療、ライフスタイルの悩みなど様々なテーマについてユーザーインタビューをしていたときだ。その中で、お金に次いでファッションに悩む人が多いことに気づいた。自分のファッションセンスに自信がない、年齢を重ねるにつれ、似合う服が変わってきた、仕事や育児に追われてゆっくり買い物をする時間が取れないなど、悩みは多様だったという。

 「僕自身、服が好きだが、女性のファッションについて深く考えたことはなかった。女性は華やかな人も多いし、きっとファッションを楽しんでいるんだろうと漠然と思っていた。でも実際は苦しんだり困ったりしている人が多い。この負の気持ちをゼロ、もしくはプラスにしたいと考えるようになった」

 この思いは、山敷氏を起業家の道に引き戻す。「当時の仕事には満足していた。でも、心のどこかに『自分でやりたい事業があったら挑戦しようかな』という感覚はあったんだと思う」と山敷氏は振り返る。

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