「探究学舎」の強いコンテンツ開発の秘密

 「コンテンツの魅力を磨くことこそが、最強のマーケティング」

 そう宝槻氏は明言する。

 探究学舎のオンライン授業の料金は月額1万円(税込み、週に1回)。授業は原則として2カ月で完結し(1カ月のものもある)、月が替わるごとに継続するかをユーザーは選択する。つまり、「続ける意味がない」と判断されると、容赦なく離れていく。

 それでも驚異の「継続率99%」をたたき出した探究学舎のコンテンツの魅力はどこにあるのか。その開発力を支える秘密は何か? 創業以来、自ら授業開発の先頭に立つ宝槻氏は、2つのポイントを挙げた。

 「1つは、一流の芸に学ぶこと。漫画家・手塚治虫さんは弟子たちに『いい漫画を描くには、一流の音楽や落語を聴き、一流の芝居や映画を観なさい』とトキワ荘で語っていた。要は、一流の芸から盗めという教え。僕も、ジブリやディズニーといった一流のコンテンツに触れ、そこから何を盗めるかを分析しています」

 盗むのは“見せ方”の技術や工夫だ。

 宝槻氏は、あるブロガーが独自に分析していた漫画『ドラゴンボール』のコマ割りに見る視覚効果も、授業に使うスライド作成の参考にしたという。「同作品の主人公・孫悟空が必殺技『かめはめ波』を打つ向きを、左右のページで変えることで、読者が没頭しやすい世界をつくっているらしいんです。授業のスライドでも、キーワードとなる言葉をどっち向きから差し込むアニメーションにするかで、子どもたちが受け取る印象は変わる。様々なエンターテインメントの見せ方から技を盗んでいます」

 スライド内のセリフをゆっくりと出すのか、速く出すのか。効果音を「パパーン!」にするのか、「クルクルッポーン!」にするのか。さらにスライドの前で授業をする講師の動きとピタリと合わせることで、子どもたちが集中して入り込める世界をつくっている。動的で五感に響くコンテンツを磨いているのだ。

驚きと感動を呼ぶ手法、「ドラマツルギー」とは?

 もう1つのポイントは、驚きと感動を呼ぶ物語性の演出。映画監督や脚本家から直接学んだという構成法「ドラマツルギー」を、授業のシナリオ作りに取り入れている。

 「観る人を夢中にさせるドラマは、(1)劇的欲求、(2)葛藤、(3)解決の3つの要素で構成される。例えば、『半沢直樹』でも、不正を暴きたいという劇的欲求から始まり、裏切りなどのジレンマで葛藤が続き、最後に『倍返しだ!』で最高のカタルシスを感じるわけですよね。同じように授業のシナリオも作り、ドラマとして楽しめるコンテンツにしています」

 「え? 大丈夫なの?」と動揺したり、「この野郎!」と腹を立てたり、「すごい!」と拍手を送りたくなったり。分かりやすいストーリー展開によって、子どもたちは喜怒哀楽の感情を安心して表出させることができる。「どんな感情で観たらいいか分からないスライドは作るな、とスタッフにも伝えています」

 感情を大きく揺さぶられることで、驚きや感動は増幅される。すると印象に強く残り、「またあの授業を受けたい」と思われるコンテンツになる。結果、探究心が刺激され、子どもたちの学びの姿勢が変わっていくというロジックだ。

驚きと感動を創り出す「探究学舎」のコンテンツ開発手法。1つの授業開発に数カ月かかるものも
驚きと感動を創り出す「探究学舎」のコンテンツ開発手法。1つの授業開発に数カ月かかるものも

 探究学舎の強いコンテンツ力を支える「見せ方」と「構成力」。その手前にあるテーマ設定については、宝槻氏はじめ講師陣が図鑑や資料をリサーチし、自ら「すごい!」と感動するネタを探している。「すごい!」と感動する瞬間に、知的好奇心が発動する。教える側の熱がそのまま授業に生かされる。「知識は感動を伝えるための材料でしかない」と言い切る点に、受験専科の学習塾との決定的な違いがある。

 探究の感動はオンラインでも十分に伝わることを証明できた今、この先に見据えるのは「続ける必要性の強化」だという。“学びの必需品”にいかになれるか。構想はすでにある。次なるヒット戦略として、宝槻氏は「学習履歴」という言葉を挙げた。

 「全国学力テストで分かる教科別の得意・不得意のスコアではなく、その子が何に対して興味を持ち、どんな学びの資質があるのかを可視化する重要性を感じています。つまり、成績ではなく学習行動の特性から、一人ひとりに適切な学習機会を提供していく。オンライン授業を通じて学習行動のデータが蓄積されれば、学習履歴に基づくサービス提供も可能になるはず。ここに強力なヒットの芽があると期待しています」

 いずれは学習行動履歴を世界中のどこでも活用できる技術が開発され、様々な業界とのコラボレーションも生まれる。そんな未来を予測しながら、探究学舎では独自の準備を始める予定だという。