
変なレストラン、変なカフェから、ロボ酒場まで。飲食店で働くロボットサービスの先駆者がQBIT Robotics(東京・中野)社長の中野浩也氏だ。遠い未来の話と考えられてきたロボットと協働する社会。新型コロナウイルス感染症の影響が広がる中、変革をどう実現させ、何を目指していくのかを聞いた。
QBIT Robotics社長
実験とは一線を画す「変なカフェ」
若者の街・渋谷のど真ん中。競合がひしめくカフェ激戦区で、2018年2月に華々しくオープンし、現在も営業を続けている店がある。運営主体は大手旅行会社のエイチ・アイ・エス(以下、HIS)。注文に応じてコーヒーなどのドリンクをカウンター内のアーム型ロボットが作って提供する「変なカフェ」だ。店員は、ロボットをメンテナンスする要員が1人だけ。この変なカフェのすごみは、単なる実験で終わらず、2年半を経た今でも営業を続けており、しかも、カフェとして“黒字”を達成している点だ。
「ロボットだけでこれほどの長期間運営し、ビジネスとしても成り立っているのは、おそらく変なカフェが世界初」。そう話すのは、この店を企画し、ほぼ独力で立ち上げた功労者であり、今はロボットサービスを提供するスタートアップQBIT Robotics(以下、QBIT)社長の中野浩也氏だ。
立ち上げ当初、変なカフェはマスコミがこぞって報道し、話題となった。広告宣伝効果があれば、カフェとしての収支には目をつぶるという考え方もあっただろう。それを許さなかったのが、変なホテル、変なレストランなど「変なシリーズ」の発案者であるHIS会長兼社長の澤田秀雄氏だ。澤田氏は中野氏に、こうくぎを刺した。「実際に営業する店を作るわけだから、カフェとして収支が成り立たなければやる意味はない」
中野氏は、この厳命を受けた瞬間から、頭の中でそろばんをはじき始めた。人間同様の動きができる高価なロボットを一から作ったのでは、とても収支が合わない。思い付いたのが、世界の様々な工場に導入されている汎用の工業用アーム型ロボットを導入してコストダウンを図る作戦だ。
ドリッパーやコーヒーカップなど、直径が異なるものをつかめるようにそれぞれ専用の手先部を開発すれば、これもコスト増の要因となる。そこで、中野氏は、ドリッパーの下部に、カップと同じ直径8センチメートルのアクリルの外枠を取り付けた。ドリッパーとカップのサイズを合わせ、同じ手先部の同じ動作でつかめるように工夫したのだ。
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