連載第1回は、テレビCMの長年の課題であった「欲しいCM枠だけを買えない」を解決する画期的なバイイング手法として登場したSAS(スマート・アド・セールス)を紹介した。第2回は広告主がこのSASを活用すべき7つの理由を解説する。デジタル広告と同じ指標でテレビCM枠が買い付けられるようになるため、テレビとデジタルの統合を推進する一翼を担う存在となりそうだ。

(写真/Shutterstock)
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 まず、1つ目の理由は「(1)人数ベースで見たコスト効率の高さ」だ。テレビCMは2020年3月に「世帯視聴率」から「個人視聴率」に指標が変わり、テレビCMを人数ベースの指標で評価できるようになった。例えば、1視聴単価あるいはCPM(1000人当たりの視聴単価)や総表示回数(総インプレッション数)といった、デジタルマーケティングと近い指標で割り出せば、他媒体とのコスト効率の比較がしやすくなる。例えば、テレビCMは個人全体(4歳以上男女)のCPMは300~400円だ。下の表は当社で実際のテレビCMキャンペーンの効率を試算した一例である。

プログラマティカが分析した、ある住宅メーカーのテレビCMキャンペーンの効率を試算したデータ。出稿量は個人全体で約750GRP。関東の人口到達率は76.3%で、インプレッション単価は346円だった。放送期間は2019年4月~19年5月(21日間)で、出稿したテレビCMの本数は242本
プログラマティカが分析した、ある住宅メーカーのテレビCMキャンペーンの効率を試算したデータ。出稿量は個人全体で約750GRP。関東の人口到達率は76.3%で、インプレッション単価は346円だった。放送期間は2019年4月~19年5月(21日間)で、出稿したテレビCMの本数は242本

 これまでの経験上、CPMはテレビ番組の見逃し配信の動画広告で4000円前後、動画配信サービスやポータルサイトなどでの動画広告で1000円~2000円程度となる。これらと比べるとテレビCMはかなり安価で、人数ベースで見たコスト効率も圧倒的に高くなる。これは投資効率の比較を行う際や、社内説明をする際にとても使いやすい指標だろう。

 SAS買い付けの専用ツールである「枠ファインダ」はテレビCM枠の評価の1つとして個人視聴率かつ人数ベースの指標も標準搭載しているため、デジタル広告とも同一指標で分析しやすくなる。

 ちなみに毎年2月に開催され、約1億人が視聴する米国の人気スポーツ番組「スーパーボウル」の30秒テレビCM1本の価格が約5億円でも広告主から人気があるのは、1視聴者あたりのコストが4.5~5.5円で、同約10円という通常時のテレビCM枠と比較して約半分程度で済むことも理由の1つである。

 SASを使うべき2つ目の理由は「(2)低コストや短期間でも効果的な露出」だ。テレビCMの特徴に「瞬発力」がある。瞬発力とは、瞬時に多くの人に情報を届ける力を指す。これはデジタル広告では絶対に真似できない。これまでキャンペーンにテレビCMを使用する場合は億単位の予算が必要と考えられていた。たしかにGRPが少ないテレビCMプランでは期待通りの放送状況にならない場合がある。しかし、SASを活用すれば、広告主の希望の放送枠を必要な分だけ買い付けられるため、出稿費が数百万円でもテレビCMの瞬発力を生かし、短期間でも集中して効果的な露出ができるようになった。

複数の放送局を包括的に最適化

 次に「(3)複数局をまたいだ最適化が可能」が挙げられる。従来のスポットCMとは大きく異なり、SASが画期的なバイイング手法と言える理由である。通常、テレビCMキャンペーンを行う場合、「(1)出稿するテレビ局を選んでから時間帯を選ぶ」か、「(2)ターゲット層に合う時間帯を想定してから出稿先を選択する」ことになる。いずれにしても、最終的には局ごとにテレビCM案を最適化していく必要がある。そして、それは一般的にはテレビCMの放送開始の10~14日前に行われることが多い。

 しかし、SASでは最初から参画するテレビ局をまたいで最適なプランを作成することが可能である。広告主のターゲット層に対してリーチ効率が良いCM枠はどれかをデータで比較しながら、1本単位で自由に購入できる。さらに約2カ月前から枠を購入できるため、他の施策や流通・営業との連携を勘案しながら進められる。これはSASだけが持つ、今までになかった進化である。

 もう1点、SASが従来のテレビCMバイイングと全く異なるのが、海外ではすでに行われていた「(4)オーディエンスデータでの枠指定購入」が日本でも可能となったことである。例えば、従来は「アルコール飲用者」や「戸建住宅購入検討者」をターゲットとする場合、メディアプランニング上ではM2(35~49歳の男性)層をターゲットとする場合が多かった。

 だが、それを各任意セグメントで評価し直すと、ターゲット設定が粗いため、必ずしも効率的な放送にはならないことがある。SASでは第1回で紹介したデータ提供会社のデータに基づき、「ターゲット含有率」などで枠を評価できる。テレビCMは視聴者層の可視化が難しいというのは過去のものとなりつつある。

テレデジ統合戦略を実現可能に

 これにより、「(5)テレビ×デジタル統合戦略」が期待できる。一般的に企業やブランド担当者は「世帯年収500万円以上のEV車興味層」や「週1回以上のアルコール飲用者」といったターゲットのプロフィールを作成したり、あるいは「消費で自己表現したい都市型生活者」のようなライフスタイルやクラスターを設定したり、プロモーションのプランニング時点では直接的なターゲットを設計する。しかし、テレビCMではデータが不足していたため、出稿枠の選択や広告の到達評価などは「30~40代男性」や「M2+F2(35~49歳の男女)」といった間接的なデモグラ(デモグラフィック、人口統計学的属性)でしかできなかった。

 一方、デジタル広告では興味や意識など、デモグラでないターゲティングでも広告枠をバイイングすることがすでに可能であった。このような環境の中ではテレビCMとデジタル広告を統合活用・評価することはもちろん、プランニング時点での予算の配分基準もあいまいとなり、その統合はなかなか進まなかった。

 SASでは前述の通り、オーディエンスデータによる枠指定購入が可能となったので、デモグラはもちろんのこと、興味や意識などをターゲティング対象として効率化を図ることが可能である。人数ベースでの評価指標、オーディエンスデータによるテレビCMの購入、SASの登場は「テレビ×デジタルの統合戦略」を推し進められる絶好の機会となるであろう。

SASは第三者がさまざまなオーディエンスデータを提供しているため、デジタル広告と同一指標で配信することも可能となる。テレビとデジタルの統合的な活用の推進が期待される
SASは第三者がさまざまなオーディエンスデータを提供しているため、デジタル広告と同一指標で配信することも可能となる。テレビとデジタルの統合的な活用の推進が期待される
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