大量消費を前提とした従来型のマーケティングは行き詰まり始めている。膠着(こうちゃく)した消費を切り開くにはやはり商品開発から取り組むべきだろう。消費者に選ばれるには、本質的・継続的なペイン(課題)を掘り起こし、課題に寄り添い続けるための商品開発が必要だ。D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)ブランドはSNSの活用で、この課題に寄り添う商品開発を実現している。

美容品のD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)ブランドを展開するDINETTEは「Instagram」を通じたコミュニケーションで発見したインサイトを基に、まつ毛美容液を開発した
美容品のD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)ブランドを展開するDINETTEは「Instagram」を通じたコミュニケーションで発見したインサイトを基に、まつ毛美容液を開発した

 小規模かつデジタルを主軸に展開するD2Cブランドは、小回りが利く特性を生かし、大企業では対応しきれないニッチな価値を追求できる。さらに、顧客とSNSやコミュニティーサイトでつながることで、変化し続ける顧客のニーズを適時把握し、商品やコミュニケーションを継続的に改善し続け、顧客を飽きさせることなくLTV(顧客生涯価値)を最大化させていく。

 顧客にとって代替不可能な商品の開発が、D2Cブランドにとっての生命線であるといってもよい。このD2C型の商品開発にこそ、飽和市場で消費を切り開くためのヒントが隠されているのだ。

 商品開発の手法は「プロダクトアウト」と「マーケットイン」の大きく2つで語られることが多い。しかし、D2C型の商品開発は顧客基点のカスタマーイン発想が必要となる。製品自体の企画・製作段階だけでなく、発売後の代替不可能性までを見据え、購入後の顧客との関係の中で付加価値を生む活動も含め、すべてを商品開発と捉えて計画を立てなければならない。

 従来の新商品開発は、まずターゲットに合わせたリサーチパネルを用意し、市場調査やアンケートなどのリサーチを実施するのが定石だった。しかし、こうした既存の手法では、有用なインサイトが得られない場合が増えている。生活者は自分に本当に必要なものや解決が必要な課題に対してそれほど自覚的ではないため、質問の仕方によって意見や要望が一般平均の範疇に収まってしまうからだ。結果的に最大公約数的なインサイトしか得られず、無難な商品に落ち着いてしまい差異化につながらない。

 一方、D2C型の商品開発では、新商品開発のために意見を聞くのではなく、普段のコミュニケーションの中で自然に交わされる会話から顧客のインサイトを抽出していく。交流を通じて、共感や応援といった心理を醸成できている関係性がベースにあるからこそ、その中から得られたインサイトが絶大な熱量を生み出す源泉となるのだ。

高付加価値な商品の開発に3つのポイント

 そのため、D2C的商品開発では、以下の3つのポイントでのSNS活用が大きく成否を分ける要因となる。

  • (1)顧客が持つ潜在的なペインポイントの発掘
  • (2)情緒価値を高める世界観やコンセプトの設計
  • (3)他者に推奨したくなるほどの商品体験の設計

 1つ目の「顧客が持つ潜在的なペインポイントの発掘」、いわゆるインサイトの発見には観察と対話が重要だ。ネット調査やアンケートなど、明らかに調査だと分かるアプローチに対しては身構えてしまう生活者は少なくない。普段の姿を観察したり、気軽なコミュニケーションをしたりする中でヒントを見つけることが重要だが、SNSをうまく使うことでこれを補える可能性がある。

 しかし、実績も知名度もない新興ブランドがいきなりSNSでファンを集めたり、大きなコミュニティーを形成したりするのは難しい。そこで、まずはブランドの世界観に関連した情報を発信して、共感してくれるファン候補を見つけることから始めるのが有効になる。これを実践しているのが、コスメブランド「PHOEBE BEAUTY UP」を展開するDINETTE(東京・渋谷)だ。

 DINETTEは商品開発に先駆け、美容分野特化の動画メディアをベースに、Instagramの公式アカウントでの双方向のコミュニケーションに注力した。丁寧なDM(ダイレクトメール)やコメントへの返信、24時間で投稿が消える「ストーリーズ」の質問機能を活用したQ&A企画などで、フォロワーからメディアを応援してくれるファンを生み出し、熱量を高めながら関係を構築した。

コスメのD2Cブランドを展開するDINETTEはブランドの開始に先駆け、Instagram上で情報発信し、「DINETTE GIRLS」と呼ぶインフルエンサー組織をつくった
コスメのD2Cブランドを展開するDINETTEはブランドの開始に先駆け、Instagram上で情報発信し、「DINETTE GIRLS」と呼ぶインフルエンサー組織をつくった

 その中で、CEO(最高経営責任者)の尾崎美紀氏が自社の世界観と親和性の高いインフルエンサーに地道にアプローチし、「DINETTE GIRLS」という組織をつくった。DINETTE GIRLSはフォロワー数よりも、美容への情熱や情報感度の高さを重視して選定している。フォロワー数が多いインフルエンサーの活用は販促支援の意味合いが強いが、DINETTE GIRLSはリサーチやマーケティング領域で力を発揮する。

 このコミュニティーに対して双方向のコミュニケーションを徹底することで、深層的欲求につながるヒントが見えてきたという。DINETTEでは、InstagramのDMに寄せられる日常的な望みや悩み、熱量の高まる投稿の傾向、気軽な回答の集まるストーリーズのアンケートなど、さまざまな観点からファンが求めているモノを探り、そこから見えてきた「目」というパーツに着目した。

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