D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)ブランドは、顧客との関係性づくりでもコミュニティーサイトやSNSで生み出したUGC(ユーザー・ジェネレーテッド・コンテンツ)を有効活用する。顧客をマーケティングパートナーと捉え、共にブランドづくりを進めることがエンゲージメントのさらなる向上につながるからだ。

完全栄養食のD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)ブランドのベースフード(東京・目黒)はサブスクリプション利用者だけが参加できるコミュニティーサイトの活用で、顧客エンゲージメントを高めている
完全栄養食のD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)ブランドのベースフード(東京・目黒)はサブスクリプション利用者だけが参加できるコミュニティーサイトの活用で、顧客エンゲージメントを高めている

 新型コロナウイルス感染症拡大や外出自粛要請の影響で、2020年5月の2人以上世帯のネットショッピング利用率が初めて5割を突破した。消費者の急速なオンラインシフトを受けて、新たにECサイトを始めたり、ECサイトへの注力度合いを高めたりする企業が続々と増えている。

 しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響が直撃し、業績が悪化している状況ではマーケティングコストを削減せざるを得ない。また、オフラインでの接点も限られるため、新規顧客の獲得の難易度はますます上がっている。マーケティングコストを抑えながら、持続的な事業展開をするうえで、既存顧客のロイヤルティーを高め、LTV(顧客生涯価値)を向上させるCRM(顧客関係管理)施策の重要性が増している。

 ただし、継続購入やアップセル、クロスセルを一方的に促すような従来型のCRMだけでは顧客の心をつかむことは難しい。購入訴求以外のコミュニケーションが必要になってくる。重要なのは顧客の声だ。コミュニケーションの中のVOC(ボイス・オブ・カスタマー)から得たヒントをマーケティングに活用するなど、既存顧客との相互コミュニケーションを深めていくことが、総合的にLTV向上に寄与する。商品やサービスの体験を可視化するUGCの創出など、CRMも顧客基点を意識することが求められている。こうした視点のCRMに先進的に取り組むのも、またD2Cブランドである。

 完全栄養食のD2Cブランドとして注目を集めるベースフード(東京・目黒)は、購入者との直接のコミュニケーションの中で得たデータを基に、商品や体験の検証と改善を繰り返して体験価値を高めている。商品自体の完成度を高めたり、商品特性を効果的に伝えたり、様々な改善を進めていく中で、既存顧客の満足度を上げ、好意的な口コミを増やし、全く新しいコンセプトの商品の市場づくりにつなげている。

サブスクリプション利用者だけが参加できるコミュニティー

 中でも注目の取り組みが、サブスクリプション利用者のみが参加できるコミュニティーサイト「BASE FOOD Labo」だ。

ベースフードは、サブスクリプション利用者だけが参加できるコミュニティーサイト「BASE FOOD Labo」を運営する
ベースフードは、サブスクリプション利用者だけが参加できるコミュニティーサイト「BASE FOOD Labo」を運営する

 BASE FOOD Laboは顧客である会員と、「研究者」と呼ばれる食や栄養の専門家が、ベースフードのお薦めの食べ方やアレンジレシピを投稿しながら交流を深め、「食や健康に関心がある」という共通点がある仲間としてつながり、より深くベースフードを体験できる機会を提供している。

 顧客同士の情報交換を促進することで、それをきっかけによりベースフードを食に取り入れる機会が増えるなど、従来型CRMが担っていたクロスセルやアップセルなどのLTV向上に寄与している。また、顧客から投稿されたレシピなどのコンテンツを広告施策などに活用するなど、顧客を単に囲い込むのではなく、マーケティングの高度化と事業成長につなげることを目的とした設計で運用されていることが従来のコミュニティーサイトとは異なる。

 コミュニティーへの帰属意識が醸成されているため、発売前の新商品試食会やファンミーティングを開催すれば、参加してくれるだけでなく商品開発などの意見を募る活動にも積極的に協力してくれる。それが商品改善などにつながる。

 ファン化した顧客はもはやマーケティングのパートナー、製品開発のサポーターになり得るのだ。継続的なコミュニケーションの中にどれだけマーケティングのヒントを見つけられるか、そしてそのヒントを成果に転換するにはどう活用すればよいかが、これからのCRM戦略を考えるポイントになる。

ロボットD2Cは見込み客段階から関係づくり

 顧客になる前から“CRM”を実施する。そんな取り組みをしているのがロボットベンチャーのGROOVE X(東京・中央)だ。同社は家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」をD2C型で販売する。LOVOTは本体価格が税抜き29万9800円と高額で、加えて月額課金がかかるため、認知から検討期間を経て、購買の意思決定に至るまでに時間がかかるのがマーケティング上の課題だ。

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