競争激化や業界規制によって、デジタル広告の効率性が低下している。こうした中、D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)ブランドは顧客をマーケティングパートナーにすることで、逆に効率性を高めることに成功している。男性向け化粧品の「BULK HOMME(バルクオム)」やライフスタイルブランド「BOTANIST(ボタニスト)」の事例に学ぶ。

男性向け化粧品ブランド「BULK HOMME(バルクオム)」はLP(ランディングページ)にも顧客が生み出したコンテンツをふんだんに活用する
男性向け化粧品ブランド「BULK HOMME(バルクオム)」はLP(ランディングページ)にも顧客が生み出したコンテンツをふんだんに活用する

 近年、デジタル広告の媒体環境と生活者の消費行動が大きく変化し、企業は新規顧客の獲得効率の低迷に悩まされ始めている。その一例がSNS広告だ。2016年あたりからSNSを中心とした主要媒体のCPC(クリック単価)の相場は上昇し続けており、16~17年に比べて19年は平均で2倍近くまで上昇。以前と同水準の獲得効率を維持し続けることが難しくなってきている。

SNS広告のCPC(クリック単価)の相場は上昇し続けており、16~17年と比較して19年は平均で2倍近くまで上昇した(アライドアーキテクツ調べ)
SNS広告のCPC(クリック単価)の相場は上昇し続けており、16~17年と比較して19年は平均で2倍近くまで上昇した(アライドアーキテクツ調べ)

 さらに、広告媒体の表現規制、広告を嫌う消費者のアドブロック利用の増加、プライバシー問題によるCookie(クッキー)の利用制限などによって、従来効率の良かった広告運用ができなくなり、施策の打ち手が限られてきた。広告効果の伸び悩みや改善施策の頭打ちが顕著になる中で、「CPM(広告表示回数1000回当たりの料金)の安いメディアを選ぶ」「ターゲティングを詳細に切り分ける」「広告表現手法に凝る」といった、デジタルマーケティングのノウハウを生かした効率改善も限界を迎えている。

第三者のCookie(クッキー)制限や、広告ブロックアプリの提供などで広告運用の難易度が上がっている
第三者のCookie(クッキー)制限や、広告ブロックアプリの提供などで広告運用の難易度が上がっている

 スマートフォンとSNSによって情報が爆発的に増え続ける中、消費の選択肢も飽和している。機能や価格を訴求する広告クリエイティブだけでは、生活者の心を動かすことが難しい。そうした時代では機能価値以上に「情緒価値」で商品やサービスが選ばれるようになってきているため、その商品を選ぶ理由になり得るストーリーや、購入前から購入後にも続く商品体験の重要性が増している。

 マーケティングのポートフォリオを刈り取り型のデジタル広告だけに偏重していた企業は、こうした変化によって広告出稿の費用対効果が悪化してしまうと、途端に事業成長に必要なマーケティングコミュニケーションが取れなくなってしまう懸念がある。

 一方、顧客と直接つながり、顧客体験向上のコミュニケーションに投資するD2Cブランドが取り組む顧客基点マーケティングでは、顧客がマーケティングパートナーとなる。顧客がSNSなどで企業に代わってストーリーを発信してくれるため、過剰な宣伝が不要になる上、余剰な広告費の削減が期待できるため、新たなコミュニケーションチャネルへの投資を加速できる。

 また、もう1つのポイントがUGC(ユーザー・ジェネレーテッド・コンテンツ)だ。UGCとはSNSに投稿された口コミや商品写真など、顧客が生み出したコンテンツを指す。D2Cブランドは顧客とのコミュニケーションの中で生まれたUGCを広告や販促に生かすことで、広告効果を高めている。

 UGCの活用に積極的に取り組むのが、BULK HOMMEを展開するバルクオム(東京・港)だ。同社がUGCの活用に乗り出し始めた理由は、SNSのプラットフォームにより適した広告クリエイティブを制作し、効果を高めるためだ。

 バルクオムは、顧客がInstagram上に自発的に投稿していた商品写真をSNS広告のクリエイティブに活用する。具体的にはどんな人が商品を使っているかの想起ができる顔出しの写真や、商品購入後の具体的な使用イメージが伝わる写真を、ツールを使い収集。その投稿者に直接広告利用の依頼をして、許諾を得ることで実現している。ユーザー視点の広告クリエイティブはInstagramのタイムラインになじむため、効果が高い。さらに投稿者が増えるほど、クリエイティブに使える素材も増える。ツールを用いて大量の素材を一括収集することで検証速度が格段に向上し、広告効果を改善できている。

 SNS広告からの流入を受けるLP(ランディングページ)にも利用者の声としてUGCを活用。リアルな口コミで訴求することで、ブランドに対する信頼性や親近感を高め、購入の後押しにつなげている。

バルクオムは顧客がSNSに投稿した画像素材を許諾を得た上で、SNS広告やLPに活用する
バルクオムは顧客がSNSに投稿した画像素材を許諾を得た上で、SNS広告やLPに活用する

 ブランドのファンでもある顧客は自分たちの写真が広告やLPなどで使われることに、むしろ価値を感じる。結果として、新たなUGCが発生する好循環が生まれ、UGCを活用したマーケティング施策を開始してから1年で、SNS広告経由での顧客獲得件数は約10倍に跳ね上がり、CPA(顧客獲得単価)は約3分の1に低減した。

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