マッシュホールディングスを代表する人気レディースブランド「スナイデル」。意外にも最初は鳴かず飛ばずだった。そこで改めてコンセプトを掘り下げ、「服をジャンルで区分するのではなく、自由に組み合わせて自由に着こなす」というスタイルの提案に徹した。

 本連載では常識にとらわれないアプローチで存在感を発揮しているアパレル業界の“革命者”たちの熱量の原点を探り、それをどのようにしてビジネスにつなげていったかを掘り下げていく。今回は前回に続いて、マッシュホールディングスの近藤広幸社長。

「ものを作って人に届けたい」がファッション業界に向かわせた

 マッシュの企業理念は「私たちの発想を形にし、人々に幸せを届ける」。「発想を形にする」という表現で、創造性をどう生かすかを明快に読み解いている。

 また、スローガンは「ウェルネスデザイン、時代とともに進化し続け、私たちにしかできないウェルネスを届けていく」であり、目指す方向も分かりやすい。アパレル業界の中でも、ここまで明快に「創造性の大切さ」をうたっている企業は珍しい。その原点はどこにあるのか。

 「小学生のころから人と違う子でした」と近藤さん。例えば、バスケットボール一つ選ぶにも、ポピュラーなオレンジ色でなく、あえてトリコロールカラーを選んでいた。小学2年生のころから音楽や映画にハマり、「ペット・ショップ・ボーイズのTシャツを着て学校に行っていました」(近藤さん)。おませさんだった近藤さんの姿が思い浮かぶ。レコードジャケットのグラフィックや映画に出てくる美術や衣装を見るのも好きだったという。

 建築家になりたいと思うようになったが、型にはまらずより自由に表現できるもので挑戦しようと考えた。ただ今でも建築や街並みを眺めるのが大好きで、それを目的に外国に行くほどだという。

 空間デザインを学び、グラフィックから建築までさまざまな領域のデザインの仕事に携わった後、1998年にCG制作を手がける会社を興した。

 一方で、「ものを作って人に届けたい」という考えを抱き続けてもいた。「それを、初期費用を抑えながら実現できるのは料理か服。どちらがいいかを考え抜き、料理は基本的に目の前の限られた人だけにしか届けられない。服なら世界中の人に着てもらえると服の世界に飛び込むことにした」(近藤さん)

 そして2005年、ファッション事業を立ち上げた。それまでファッション業界には広告の仕事で少し関わったことがあったが、「少し閉鎖的という偏見みたいな印象もあって、あえて業界での横のつながりを持たずに自力で立ち上げようと考えました」(近藤さん)。

 アパレル企業で働いた経験はなく、業界の仕組みが全く分からない中、レディースブランド「スナイデル」を立ち上げた。「デパートに出店するとは?」「ファッションビルの家賃とは?」「下代とは?」と分からないことだらけ。業界の商習慣をほとんど知らないまま、体当たりで営業していったのだ。

 当然のことながら、最初から順調だったわけではない。門前払いというところも少なからずあった。しかし、「君が面白いから、やってみましょう」とチャンスを与えてくれたバイヤーがいて、出店が決まった。しかし、そこでもハプニングが。オープン前日に売り場に届くはずの商品がいくら待っても来ない。当日の朝5時にやっと届き、何とか間に合わせた。身が縮む思いを経てのスタートだったという。

レディースブランド「スナイデル」
レディースブランド「スナイデル」
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最初は鳴かず飛ばずだった「スナイデル」

 何とか出店はしたものの、なかなか人気ブランドになれない。カジュアルなストリートファッションとフォーマルなスタイルをミックスさせた“ストリートフォーマル”というコンセプトには自信があったものの、立ち上げて1年間は鳴かず飛ばずだったという。

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