コロナ禍で、街に出て買い物をする必然性がなくなった。アパレルは不要不急であり、ネットで買えばいいこと。頭では分かっているのだが、生来の服好きな上、気持ちを上げるにはやっぱり服が必要と、自分に言い訳しながら買い物に出かけた。
欲しかったのはビビッドピンクの服。ネットフリックスの『エミリー、パリへ行く』を見て、つい引かれたのだ。華やかな色味なので、クリスマスに向かう季節柄、あるに違いないと想定してもいた。
ところがこれが見つからない。キャメル、グレイ、ベージュ、黒などはあるものの、カラフルな色はせいぜいオレンジやグリーンで、ビビッドピンクがないのである。ようやく見つけたと思ったら、いかんせん似合うデザインではない。あふれるほどブランドショップがあるのに、欲しいものがないとはどういうことか。
探しながら気づいたのは、似たような色柄、デザインの商品ばかりが並んでいること。ブランド名がなければ、どこの服か分からないのだ。これだけ似たようなものが多いと、全体が平板に見えてしまう。想定内の商品のオンパレードではお客の気持ちが動かない。だから買わないのである。
本来のファッションは、出合ったときに「見たら欲しくなった」「着た自分を想像してワクワクした」「気分が上がった」というように、お客の“潜在的な欲望”に働きかけ、突き動かしてくれるもの。それが今の店頭にはないということだ。
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