ファッション業界独特の「春夏」「秋冬」という半年サイクルからの転換が求められているのは、消費者が新しさに価値を見いださなくなったこと、そしてサステナビリティーへの対応ニーズが大きい。半年ごとにトレンドを提案し続けるファッションのありようにもはや説得力はないのだ。
コロナ禍による百貨店やファッションビルの不振、アパレル企業の倒産や業績悪化などが盛んに報じられている。だが理由は新型コロナだけでなく、その兆しは以前からあった。“既存のシステム”が時代とズレていることに気づきながら、まだしばらくは成立するという甘えがあった。それが一気に現象化し、対処せざるを得なくなった。これが実態ではないか。
この連載では、ファッション業界の何が課題で、どうしたら前に進めるのかについて、具体的な企業やブランドの動きを含めて考察していく。40年弱にわたって業界の内外を見てきた立場から、他の業界と相通じる要素が少なくないと感じているから。読んでくださった方のお役に少しでも立てればうれしい。
前回の記事では、ファッション業界が半年をワンサイクルとしたビジネスの仕組みを持っており、ファストファッションもこの文脈の中にあって、大車輪を回すビジネスモデルとして多くの企業が取り入れてきたこと。それが一部で過剰化し、消費者のニーズと乖離(かいり)してしまった結果、業界を回していた半年単位のファッションサイクルを見直さなければならなくなったことに触れた。
では、半年サイクルそのものの転換を消費者が求めている背景は何なのか。大きくは「消費の成熟化」と「サステナビリティー」が挙げられる。
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