ブルックス ブラザーズ、レナウン……名門アパレルブランドなど、国内外のアパレル企業が次々に破綻。これは時代とズレていることに気づきながら放置してきた“既存システム”の問題が、一気に現象化しただけではないか。長年ファッション業界を見てきたifs未来研究所所長の川島蓉子氏が斬り込む。

ファストファッションで一世を風靡した米フォーエバー21は2019年に破綻。日本からも撤退した
ファストファッションで一世を風靡した米フォーエバー21は2019年に破綻。日本からも撤退した

 2020年8月頭の日曜日の昼下がり。新宿に出かけ、伊勢丹と高島屋を巡っていた筆者は、体が硬直し気分が沈んでいった。売り場はぴかぴかに整えられ、華やかな服がずらりと並び、販売員はきちんとした居住まいで控えている。百貨店大好き人間なのに、なぜ気持ちがやられたのか。考えてみて、客がいないからと思い至った。完璧な売り場だけに、客がいないことが強烈な欠落感、寂寥感につながっている。

 これに遡ること2週間ばかり、7月中旬の土曜日のこと。「渋谷スクランブルスクエア」を訪れた。最近のファッションビルは、効果効率を求めてブランドショップがぎっしりで、通路や休憩スペースは必要最低限というところが多い。ところがここは、広めの通路を備え、少しゆったりした造りで心地いい。ただ、やはり客は少ないし、巡っていて気持ちが盛り上がらない。買おうという気になれないのだ。

 もちろん、背景に新型コロナウイルスの感染拡大があることは言うまでもない。が、理由はそれだけでなく、兆しとしては以前からあったこと――平日昼下がりの百貨店や、午前中のファッションビルは、インバウンドを除くと客が少なかった。もっと言えば東日本大震災以降、明らかに減少傾向が続いていた。地方百貨店の相次ぐ閉店が、これを如実に物語っている。

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