
両面テープは便利なようで不便な点もある。その煩わしさを解決する両面テープが、カンミ堂(東京・目黒)が2019年8月に発売した「タップテープ」だ。2020年2月には扶桑社が主催する「文房具屋さん大賞2020」で機能賞を受賞し、話題を呼んだ。
両面テープは剝離(はくり)紙が付いていて厚くて切りにくいためか、セロハンテープのようなテープカッター付きの製品が少ない。ロールの状態で売られているものが多く、文具というより“業務用”という雰囲気がただよう。ハサミを使うと持ちかえが面倒だったり、粘着材が刃に付いたりと厄介な点も多い。
「タップテープ」は、スタンプを押すような要領で、手軽に両面テープを貼ることができる。等間隔でカット済みのテープを、ロール状で本体に内蔵。剝離紙の端を引くと、本体の斜めにカットされた角にテープの1片が現れる。それを貼りたいものの裏面に押し付けるだけで、テープを手軽に貼りつけられる。テープは表と裏の粘着力に差をつけてあり、スタンプして写真やカードに付く面はしっかりと貼りつく。壁やノートに貼る面は粘着力が弱く、付箋紙のように繰り返し貼ったり剝がしたりできる。
カンミ堂にとってタップテープは、初めて発売した両面テープだが、同様の粘着剤を使った製品は以前からあった。ケース入りの付箋紙「ココフセン」はケースの裏側に粘着テープが貼ってあり、モニターのフレームやノートの表紙など好きな場所に貼ったり剝がしたりして使える。「この粘着素材を使えば、両面テープの面白い商品ができるのではないかと考えた」とカンミ堂で開発を担当した田村友紀氏は振り返る。
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事務用品は使いたくない
同社では月に1回、社員全員が集まる商品開発会議を開催している。そこで両面テープを議題にしたところ、「事務用品っぽくて、自宅では使いたくない」「必要な大きさに切るのが面倒」といった声が上がった。そこでコンセプトにしたのが「日常使いやすい手軽さとデザイン」だった。生活空間になじむように、ケースにはプラスチックではなく紙を採用。紙の質感と風合いが楽しめ、さらに上質感のある箔(はく)押しを施し、「クラフト感を出すように仕上げた」(田村氏)という、まるで小さい本のようなデザインだ。
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