人気文具に学ぶ「ヒットのつくり方」

GRASSE TOKYO(グラーストウキョウ、東京・江東)が開発・販売する水彩絵の具「香の具(kanogu)」は、植物由来の精油(エッセンシャルオイル)を配合した絵の具。色だけでなく、ラベンダーやイランイラン、オレンジといった香りも楽しめ、癒やしの効果がある点も特徴だ。一般的な絵の具より高額ながら、年間約1万本を出荷。今後は年間5万本と5倍の市場拡大を狙う。

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グラーストウキョウが開発・販売する水彩絵の具「香の具(kanogu)」。100%天然の精油を絵の具に配合した。絵手紙向けの専用ポストカードも製品化している
グラーストウキョウが開発・販売する水彩絵の具「香の具(kanogu)」。100%天然の精油を絵の具に配合した。絵手紙向けの専用ポストカードも製品化している

 香の具は、一見すると9色を持つ普通の水彩絵の具。だが、ふたを開けるとどれもいい香りがする。青色はジュニパーベリーと呼ぶ植物の精油により、森の中にいるような雰囲気がただよう。赤色はゼラニウムを使い、バラを思わせる香りが立ちこめる。紫色はラベンダーの香りがするため、優しく心地よい気持ちになりそう。黄色はイランイランから抽出した香りを使った。色を混ぜ合わせるとさまざまな色になるように、香りも混ざることで新しい香りがどんどん生まれてくる。これで絵を描けば華やかな色と一緒に、いい香りに包まれそうだ。

 グラーストウキョウは、アロマやフレグランスなど香りに関する製品を手掛けてきた。香りの市場を新たに探るため、水彩絵の具に香りを組み合わせた製品を開発。2019年10月に発売したところ、ユニークな製品としてテレビや雑誌、SNSなどに注目されるようになった。趣味で絵を描く人や、絵手紙を描くユーザーなどに喜ばれているという。ツイッターには「精油の香りがとてもいい」「こんな画材があるとは」「香りがすてきなため、絵の上手下手は関係なくなる」といった声が並ぶ。絵画とは異なる香りの体験が、新しい市場を生み出した。絵を描くことで香りについて学ぶ、幼児教育用といった市場にも注力している。

 「香の具は、絵を塗りながら香りを学ぶことができる。普通の絵の具とは異なり、色を混ぜ合わせることで香りを調合し、未知の香りに出合う面白さを感じることができる。香りの楽しさを多くの人にもっと体験してほしい」とグラーストウキョウ社長の藤井省吾氏は言う。赤色と黄色を混ぜるとオレンジ色になるが、ゼラニウムとイランイランを混ぜるとどんな香りがするか。絵画の色使いが香りに結び付くだけに、今までにない楽しみ方ができそう。

 9色があり、1色当たり7ミリリットルのチューブで660円(税込み、以下同)、35ミリリットルの瓶は2200円。チューブは9色セットで5940円も用意している。一般的な絵の具なら1色当たり100円程度の製品もあるため、高額の部類に入るだろう。それでもチューブ全体で年間1万本を販売し、今後は年間5万本を狙う勢い。

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