
特集3回目で取り上げる製品は、キングジムの電子付箋「ブギーボード BB-12」だ。付属のペンなどで液晶画面に文字を書く電子文具だが、データ変換や外部出力の機能はない。それでも2019年2月に発売すると年間販売予定数を約半年で達成し、一時的に在庫切れを起こした。人気の理由は付箋に徹して使い勝手を高め、余計な機能を付けなかったからだ。
BB-12は長さ86×幅86×厚さ5.5ミリメートルで、3.9インチの液晶画面を備える。スリーエムの75ミリメートル四方の紙の付箋「ポストイット」より、一回り大きいサイズだ。電源をオン・オフする必要はなく、付属のスタイラスペンの他、爪や指など先がとがっているものなら液晶画面に直接、文字や線を書き込むことができる。書き心地は滑らかで、筆圧の強弱によって線の太さが変わる。操作性はまさに紙の付箋だ。
キングジムの開発本部電子文具開発部デジタルプロダクツ課長の八木正樹氏は、「オフィスや家庭で、付箋やブロックメモといった小さなメモの需要が高いことに着目して開発した」と語る。電話番号や備忘録、次にやるべきことなど、ちょっとしたメモを書くといった市場を狙った。BB-12の背面には小型のマグネットが付いているので、例えば冷蔵庫の壁など金属部分に貼り付けて使える。金属部分がない場合も、同こんしているマグネット付きのシールを介してBB-12を貼り付けることが可能。紙の付箋と同じような使い方ができるようにした。
紙の付箋と大きく異なる点は、液晶画面の下にあるボタンを押せば、書いたメモを瞬時に消去できること。「メモをデータとして保存しない。ボタンを押せば完全に消える。電話番号などの個人情報をメモしても、外部に流出しにくい。紙の付箋より安全性は高い」と八木氏は言う。
同様な電子文具を開発しようとすると、手書き文字を高精度に変換したり、パソコン連携を狙って外部出力のインターフェースを設けたりする例が多い。キングジムもそうした商品を販売しているが、BB-12では発想を逆転。付箋として特化したところ、むしろ市場が広がった。個人向けでは家庭内のメモ、ビジネス向けではオフィスをはじめ、病院や薬局、介護施設など、いずれもちょっとしたメモを取りたいというニーズに対応できた。付箋をイメージして製品もカラフル。オレンジ、イエロー、ブルー、ブラック、ホワイトの5色を用意している。
このコンテンツ・機能は有料会員限定です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー