成功が客を呼ぶ カスタマーサクセス

あらゆるサービスやモノがサブスクリプション化に向かう時代において、カスタマーサクセスは事業成長の最も重要なマーケティング施策になりつつある。技術的にカスタマーサクセスを支えるツールが相次ぎ登場している。3つのステップで有効活用法から、カスタマーサクセスで成果を出すポイントを分析してみよう。

カスタマーサクセスは顧客の課題に先回りして提案することで、サービス利用の定着につなげる(写真/Shutterstock)
カスタマーサクセスは顧客の課題に先回りして提案することで、サービス利用の定着につなげる(写真/Shutterstock)

 海外のSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)事業者の間で広がったカスタマーサクセスというマーケティング概念が国内にも浸透するにつれ、支援するツールやサービスが徐々に登場し始めた。ベンチャー企業のHiCustomer(ハイカスタマー、東京・目黒)の「HiCustomer」や、ソフトウエア開発を手掛けるODKソリューションズが2020年6月に提供を始めた「pottos(ポトス)」はカスタマーサクセス特化のツールだ。カスタマーサクセスは国内ではBtoB(企業向け)事業者のニーズが高いため、ツールは業態特化型が中心となっている。

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 また、プレイド(東京・中央)の「KARTE(カルテ)」はもともとECサイト内での行動を基に情報を出し分けるマーケティングツールとして開発されたが、カスタマーサクセスにも応用可能なことから、この1年でBtoBのSaaS事業者の利用が約3倍に増加したという。

 なぜ、カスタマーサクセスツールの需要が高まっているのか。ODKソリューションズビジネスソリューション部事業開発課長の河合勇治pottosプロダクトマネージャーは企業が抱えている共通課題をこう説明する。「サービス提供者は自社の顧客がサービス・ツールを利用する際、どこでつまずいているのか、どの機能が使われていないのかといった状況は分からなかった。これを可視化し、アプローチすべき課題を効率的に確認したいというニーズが高まっている」。BtoB向けのサービス・ツールは最初の設定などが複雑なことが多い。ところが、自社の顧客がどの段階で悩んでいるのかが分からなかったため、手の打ちようがなかったわけだ。

ソフトウエア開発を手掛けるODKソリューションズは、国内でもカスタマーサクセスの需要が高まると踏んで、2020年6月にカスタマーサクセスツール「pottos」の提供を始めた
ソフトウエア開発を手掛けるODKソリューションズは、国内でもカスタマーサクセスの需要が高まると踏んで、2020年6月にカスタマーサクセスツール「pottos」の提供を始めた

 こうした課題は、ソフトウエアのSaaS化によって顕在化した。従来、カスタマーサクセス的な役割を担ってきたのは営業担当者だ。担当する営業先に足しげく通い、御用聞きとなって顧客の課題を解決する。対象企業が少ないうちはそれで十分だったかもしれない。しかし、SaaS事業の多くはソフトをクラウド化して利用料を下げる代わりに、導入の規模を追い求めることが多い。顧客企業が増えるほど、人海戦術で顧客の状況を把握するのは難しくなる。これを解決するのがカスタマーサクセスツールだ。

 カスタマーサクセスツールは、サービス・ツールにSDK(ソフトウエア開発キット)を組み込んで利用する。カスタマーサクセスツールのSDKを組み込んだ状態で顧客に導入することで、管理画面で利用状況をモニタリングし、課題の発生状況に応じてカスタマーサクセス部門がすぐに顧客とコミュニケーションをとれるようになる。

カスタマーサクセスはSaaSにSDKを組み込むことで、データを取得して利用状況をモニタリングできる
カスタマーサクセスはSaaSにSDKを組み込むことで、データを取得して利用状況をモニタリングできる

 課題の発生は「ヘルススコア」と呼ぶスコア管理機能を使うケースが多い。ヘルススコアは自社のサービス・ツールの機能ごとにスコアリングするための重み付けをして、それらを合算して算出する。例えば、ログイン率はサービスの利用の有無に最も関わるため、重視するといった具合だ。要は解約につながりやすい要因を重視したロジックを組むわけだ。ヘルススコアが下がり解約につながる兆候が表れた場合に、アラートがカスタマーサクセス担当者に届くため、メールやチャットなどで適切な対応をすることで防止策をとれる。

 CRM(顧客関係管理)ツールとも似ているが、CRMツールの多くは性別や年代、購入履歴といった過去の顧客データでセグメントを抽出してメールなどでマーケティングをする。一方、「特定の機能の利用率が高まると解約率が下がるといった実績があればそれを目標に据え、顧客のサービス・ツールの利用状況をデータで把握し、プロアクティブ(能動的)に施策を実施するのがカスタマーサクセスだ」とHiCustomerの鈴木大貴社長は説明する。サービス・ツールの利用状況に応じて、対策すべくセグメントが抽出される点がCRMツールとは異なる。

カスタマーサクセスのタスクを自動管理

 カスタマーサクセスは、本特集の第1回で解説した通り、「導入期」「定着期」「成熟期」という3つのステップで顧客を分類し、ツールを使いながら施策を実行していくことでより効果が出せる。各ステップで重視すべき施策を順に解説していこう。

カスタマーサクセスは「導入期」「定着期」「成熟期」という3つのステップで顧客を分類し、それぞれ施策を実施していくことが重要だ
カスタマーサクセスは「導入期」「定着期」「成熟期」という3つのステップで顧客を分類し、それぞれ施策を実施していくことが重要だ
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