マーケティングの変革にDX(デジタルトランスフォーメーション)は不可欠となりつつある。ところが、DXの成果がうまく出ないときに「これはブランディングの一環だから」と開き直る人もいる。その言い訳は通用するのか。デジタルマーケティングの専門家である垣内勇威氏が解説する。

マーケティングDXを効果的な施策にするには「実際に成果があるのか/ないのか」「ブランディングに寄与するのか/しないのか」を改めて意識する必要がある(写真/shutterstock)
マーケティングDXを効果的な施策にするには「実際に成果があるのか/ないのか」「ブランディングに寄与するのか/しないのか」を改めて意識する必要がある(写真/shutterstock)

 マーケティングDXの現場では、しばしば「ブランディング」という言葉が飛び交う。「このWebサイトの目的はブランディングです」「その施策はブランディング観点でNGです」などのフレーズを職場で耳にしたことがある人も多いはずだ。しかし、このフレーズを発した人に「ブランディングの定義とは何ですか?」「その影響は数値化できるんですか?」「本当にビジネスに貢献するんですか?」などと質問すれば、その場が凍りつくことは間違いないだろう。

 多くの職場で「ブランディング」という言葉は曖昧な意味のまま使われ、時にはビジネスに貢献しない仕事を正当化する言い訳にされる。デジタルマーケティングでは、デザインのような感覚的な仕事や、長期的な効果を期待する仕事など、数字での評価が難しい施策も多い。それ故に「ブランディング」という隠れみのは、自己満足の仕事をはびこらせ、無駄な予算と工数を垂れ流している。

「先進的」なはずが「使いづらい」印象に

 過去にある医薬品メーカーで「ブランド刷新」を目的に掲げた、Webサイトのデザインリニューアルが行われた。先進的なデザインのWebサイトを作ることで、先進的な製薬企業であることを世の中にアピールすることが狙いだ。社長肝煎りのこのプロジェクトは、ブランドに強いとされるコンサルティング会社、有名デザイナーなどが参画し、多額の予算と半年もの歳月をかけ、当時はまだ珍しかった「動画」を大量に用いたWebサイトを完成させた。

 私はこのWebサイトが完成した後、その効果を検証するために参画した。まずWebサイトを利用した数百人にアンケートをとったのだが、結論から言えば、先進的なイメージを与えたいという「ブランディング」効果は皆無だった。回答者のうち8割以上は「先進的な印象」よりも、「使いづらい印象」だけを持っていた。

 次にWebサイトに訪れたことがあるユーザーに直接インタビューし「使いづらい印象」の原因を探った。まずこのWebサイトに訪れた人は、みな明確な目的を持っていた。面接を受ける前に企業研究したいという学生、薬局で薦められた子供用の薬について詳しく知りたいという母親、新しい医療用医薬品について詳しく調べたいという開業医など、能動的に見たい情報があってWebサイトに訪れる。

 動画中心のWebサイトは表示が重いうえ、このサイトでは動画が終わるまで次ページへのリンクが表示されない(スキップはできるがそれも面倒だ)。リンクも格好良さを重視するあまり、英語のリンクしかなく、日本人はなかなか目的の情報にたどり着けない。インタビューしたユーザーは口をそろえて「使いづらいサイト」「鬱陶しいサイト」という印象を抱き、デザインが変わったことに気づいてすらいなかった。

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