時代によってその概念が変遷してきた「ブランディング」。曖昧になりがちなこの言葉をマーケティングの一部として捉え、よりシンプルに、実務のイメージが湧くようにしたい。博報堂コンサルティング執行役員の楠本和矢氏が自身の経験を踏まえて導き出したのは「連想」を中心に据えたアプローチだった。

ブランディングをもっとシンプルに考えるポイントとは(写真/Shutterstock)
ブランディングをもっとシンプルに考えるポイントとは(写真/Shutterstock)
現実的に考える新ブランディング論
【第1回】ブランディングはなぜ曖昧になったのか 歴史から考える
【第2回】ブランディングは、もっとシンプルに捉えると本質が見えてくる←今回はココ
【第3回】ブランドコンセプトのつくり方とは 「3つの連想」を積み重ねる

 1990年代から日本でも本格的に使われ始めたブランディング。前回は、これまでの歴史を振り返り、そもそも「何の目的でブランディングを実施するのか」を外して考えるべきでないというお話をしました。今回は、かれこれ20年近くこのテーマに関わってきたコンサルタントとしての経験や視点、そして反省に基づいて、あるべきブランドの定義の仕方や、ブランディングの進め方について見解を述べさせていただきます(この稿は所属組織ではなく、あくまでも一個人としての見解となります)。

前回(第1回)はこちら

ブランディングのシンプルな捉え方

 まずはブランドの定義です。「ブランドは絆だ」「ブランドは企業の社会的な存在を表明するものだ」など色々な捉え方はありますが、個人的には、できるだけシンプルに分かりやすく位置付けたいと考えています。前回お伝えした通り、ブランドを様々な戦略の「上位概念」的に捉えるのではなく、マーケティングの一部だと捉え、シンプルに実務のイメージが抱けるようにするにはどうすればいいか。私自身としてはブランドを「提供側が企図した『連想』が伴っている名称」と定義しています。

 例えば「SUBARU」と聞いたら、ボクサーエンジンや4WDという機構イメージをすぐに連想しますよね。クルマに少しでも興味がある人に聞くとほとんどそう答えるでしょう。「ユニクロ」と聞けば、私なら「低価格で高品質」というプロダクトに関するイメージを思い浮かべます。このような連想はきっと提供側が企図しているものと想定されます。後述しますが、こうした代表的な連想が基点となって、他の連想に波及していくのです。

 ポイントとしては、定義する連想は、絞られたものであること。1つの名称に対して、なんでもかんでも連想要素をてんこ盛りにしたコンセプトがあったとしても、生活者が情報処理できるはずはありません。定義すべきコアとなる連想は1つ、もしくはそれにつなげる連想を、多くても2〜3程度に絞ることが必要でしょう。

 ブランドとは「提供側が企図した『連想』が伴っている名称」と位置付けると、ブランディングの定義は必然的に「提供側が企図した『連想』を名称に付与するための活動」になります。

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