withコロナ時代の「都市DX」

ロボットと共生し、自動運転車やドローンが街を行き交う──。SFで見た未来都市を、人類はまだ形にできていない。建築家の豊田啓介氏はゲームエンジンを活用するという全く新しいアプローチで、スマートシティ、すなわち都市のDX(デジタルフォーメーション)を描こうとしている。

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コモングラウンドという概念を提唱し、都市のDXについて語る建築家の豊田啓介氏
コモングラウンドという概念を提唱し、都市のDXについて語る建築家の豊田啓介氏

 人間とロボットはなぜ共生できないのか。建築家の豊田啓介氏は人間とロボットの間に「共通のフォーマット」がないからだと説く。

 目の前にテーブルがあるとする。我々は当たり前にテーブルだと認識しているが、ロボットはテーブルという物を理解できない。だから“対話”ができないのだ。人間は物理世界(現実世界)を、ロボットはデジタル世界を生きている。つまりは住んでいる世界が違う。あらゆる情報を数値に落とし込んだデジタル言語でテーブルを記述し、情報を整理して初めて、ロボットは人間と同様、目の前にテーブルがあると認識できるのだ。

テーブルをデジタル言語で記述しなければ、ロボットは目の前のテーブルを認識できない。コモングラウンドという“翻訳基盤”があって初めて人間とロボットは同じ共通認識を持てる(大阪商工会議所「コモングラウンド・リビングラボ」の概要資料より)
テーブルをデジタル言語で記述しなければ、ロボットは目の前のテーブルを認識できない。コモングラウンドという“翻訳基盤”があって初めて人間とロボットは同じ共通認識を持てる(大阪商工会議所「コモングラウンド・リビングラボ」の概要資料より)

 この現実世界とデジタル世界をリアルタイムでつなぐ新たなフォーマットを豊田氏は「コモングラウンド」と定義し、社会実装を目指している。

 コモングラウンドがあれば、クルマは互いに通信しなくても、コモングラウンドを通じて交通状況を把握し、最適なルートで安全に目的地にたどり着ける。「仮にすべてのクルマが自律走行していれば、全移動をコントロールできる。例えば、渋滞が起きそうなら、クルマの何割かは別のルートへと誘導できる。渋滞がひどくなれば道路を広げ、使われていなければ道路を他のことに使ってもいい」と豊田氏は語る。

 しかし、コモングラウンドの構築方法は、まだ確立されていない。巨大なブルーオーシャンが突然、目の前に現れたのだ。豊田氏が着目したのは、ゲームエンジンである。ゲーム上ではプレーヤーの行動や経験値、疲弊具合をAI(人工知能)で分析し、その時々に応じて敵の強さやダンジョン(ゲームのステージ)の難易度を変えられる。

 「複数のキャラクターを動かし、それぞれの行動を最適化する環境のつくり方など、次世代型スマートシティに必要なアルゴリズム、ノウハウを全パッケージで持っているのがゲーム業界。だからこそ、ゲームエンジンで環境を記述をするのが実は一番の近道になる」(豊田氏)。建物の3Dモデルや地図情報など現実世界に存在する多種多様なデータを、ゲームエンジンを使って読み解くことで、ヒトもロボットも利用しやすい形で情報を手にできるようになるという見立てだ。

建物の3Dモデルや地図情報など実世界に存在するさまざまなデータをゲームエンジンを使ってプラットフォーム化し、ユーザーごとに最も使いやすい形で提供することで、サービスの開発コストも下げられる(同上資料より)
建物の3Dモデルや地図情報など実世界に存在するさまざまなデータをゲームエンジンを使ってプラットフォーム化し、ユーザーごとに最も使いやすい形で提供することで、サービスの開発コストも下げられる(同上資料より)
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