スマートシティの突破口は「寄り添うAI」「オフグリッド」にあり(画像)

先端技術を盛り込んだ未来都市、スマートシティ。人の動きを追うセンシングや自律運転など、さまざまな分野で技術の開発が進む。さくらインターネットフェローであり、スタートアップ支援やIoTハードウエアのプロトタイピングへ投資を行う小笠原治氏に、鍵となるテクノロジーと都市の未来を聞いた。

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小笠原 治氏
ABBALab代表取締役/さくらインターネット フェロー/京都造形芸術大学教授/tsumug取締役
1971年京都市生まれ。さくらインターネットの共同ファウンダーを経て、ネット系事業会社の代表を歴任。その後、シェアオフィス「NOMAD NEW'S BASE」やスタンディングバー「awabar」などを手がけながら、2011年、nomadを設立しスタートアップ支援事業を軸に活動。2013年、ABBALabとしてIoTスタートアップのプロトタイピングに特化した投資事業を開始。同年、DMM.makeのプロデューサーとしてDMM.make 3Dプリントを立ち上げ、14年にはDMM.make AKIBAを設立。15年8月から同エヴェンジェリスト。同年、さくらインターネットにフェローとして復帰。17年、京都芸術大学教授、mercari R4Dのシニア・フェローに就任。他、内閣府SIP構造化チーム 委員、経済産業省 データポータビリティに関する検討会 委員、福岡市スタートアップ・サポーターズ理事など。総務省のデータを活⽤したスマートシティ推進のワーキンググループへの参画やスタートアップ⽀援を通じ、テクノロジーの観点からスマートシティづくりをサポートしている。

世界各国、各地でスマートシティ構想が動き始めています。小笠原氏が考えるスマートシティとは。

小笠原 治氏(以下、小笠原氏) AI(人工知能)をベースとした、“AI-Ready”な状態がスマートシティの前提だと考えています。現状、ICT(情報通信技術)やIoT(インターネット・オブ・シングス)を駆使して、都市インフラを効率化する議論が多くされていますが、ここまでは「自動化」であり、その先にAIを組み合わせた「自律化」があります。IoTとAIが効率的に組み合わさることで、本当の意味での「スマート」になる。ただ、現時点では、自動化すら進んでいない領域が多いのが現状です。

“AI-Ready”のスマートシティを考えるうえで、カギとなるテクノロジーは。

小笠原氏 自動化すらできていない領域が多いと話しましたが、まずはデータをいかに収集するか、そしてストックするかが重要なのは間違いありません。IoT化でさまざまな情報が取得できるようにはなりました。それをどう集めて生かすか、それが大きな課題です。

 データに関しては、大きく2つの考え方があると思います。「現状見えている課題を解決するために、必要そうなデータのみを集めて残す」という派と、「一旦あらゆるデータを取得して残しておこう」という派です。前者は、使えないデータ(ごみ)からは知見は見つからないという考え方であり、後者は今は使えないごみのように見えるデータからも、将来は何か知見が得られるかもしれないという考え方に基づいています。

 私は後者の考え方。残せるものはすべて残したい。その発想で私が関わっているのが、「Tellus(テルース)」です。

 Tellusは、日本初の衛星データプラットフォームです。さくらインターネットが、経済産業省から受託開発と運用を任されたプロジェクトで、宇宙航空研究開発機構(JAXA)や民間企業の協力により、高解像度の衛星写真や地形分類、植生分布、気象上表などさまざまなデータを無料で公開。衛星データに加え、衛星データを扱うためのさまざまなツール、さらにはアプリ開発環境まで提供しています。衛星データは容量が非常に大きく、また扱いが難しいという課題がありましたが、誰もが簡単に活用できる環境を整えることで、産業利用を促進しようとするのが狙いです。

 また、法人や個人が衛星や地上で取得できるデータに加え、解析アルゴリズムなどを販売・購入できるマーケット機能も備えています(現状は無料で運用。2020年内をめどに課金機能を提供予定)。従来、衛星データは、災害対策や環境管理などに利用されていましたが、使われていないデータも数多くあります。ここに生活を変える新しいデータが眠っている可能性があります。さらに、地上から取れるデータなどを組み合わせることで、新たなビジネスの種が見つかるかもしれません。衛星データから地表面の状態を緻密に分析し、農業の効率化につなげる動きもあります。また、人流データなどを組み合わせれば、混雑予想や人の誘導に活用できる可能性もあります。

 こういったデータを、ストレージや解析ツールと一緒にパブリックに使えるようにしていくことで、新しい知見が発見され、データの価値が切り替わるかもしれません。今は、できる限り多くのものをデータ化していくことを考えています。

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