コロナ禍を受け、ニューノーマル(新常態)時代の新たな都市づくりに向け、日本の大手企業が参集する一大プロジェクトが2020年8月に立ち上がった。その名も、「スマートシティX」。日本でも、都市を丸ごとDX(デジタルトランスフォーメーション)する動きが活発化している。その最前線を追った。

2020年8月26日に行われた「スマートシティX」のバーチャル発表会。日本の大手6社が参画を決めた(写真/スクラムベンチャーズ)
2020年8月26日に行われた「スマートシティX」のバーチャル発表会。日本の大手6社が参画を決めた(写真/スクラムベンチャーズ)
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 「スマートシティX」は、サンフランシスコを拠点とするスクラムベンチャーズが主導し、世界中のスタートアップとのオープンイノベーションを進めるプロジェクトだ。参画する日本の大手企業は、自動車業界からトヨタ自動車のAI(人工知能)ソフトウエア開発子会社、トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント(TRI-AD)、鉄道業界からはJR東日本、損害保険のあいおいニッセイ同和損害保険、エネルギーの出光興産、ITの日本ユニシス、広告の博報堂と、業界をまたいで有力な6社が初めて集まった。

 スクラムベンチャーズの宮田拓弥ジェネラルパートナーは、スマートシティXを立ち上げた背景として、3つのポイントを挙げる。まず、1つ目は世界で加速する産業のDX、およびスタートアップによるディスラプション(創造的破壊)。テクノロジーの発展によって、「あらゆる業界にとって人ごとではない変化が起きており、それは同時にチャンスでもある」(宮田氏)。この流れを急加速させるのが、2つ目のポイントであるコロナ禍が迫る社会、暮らしへの影響で、デジタル技術を媒介とした産業連携を進め、新たな価値観や慣習であるニューノーマルへの対応が急務となっている。

 そして最後の3つ目が、日本が課題先進国であることだ。超高齢化をはじめ、頻発する大規模災害、インフラの老朽化など、日本を取り巻く環境は一見厳しいものだが、こちらも「前向きな未来への変革の機会」(宮田氏)と捉えられるというわけだ。

トヨタ子会社など参画企業の狙いは?

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