
新型コロナ禍で拡大したテレワーク。通勤が不要になった半面、孤独感やコミュニケーション不足に悩むビジネスパーソンも少なくない。同僚に気軽に相談したり、雑談をしたり──。リモート会議などとは違う、オープンなコミュニケーションを実現する仮想オフィスツールこそ、テレワーカーに必要なものかもしれない。
近年、感度が高いといわれる企業が求めるオフィスには共通点がある。「広大なワンフロアをパーティションなどで区切らずに社員全員の顔が見渡せる」「会議室のほかに、ベンチやテーブルを置いて、他部署の人とも気軽にコミュニケーションが取れて、イノベーションを起こしやすい」──といったものだ。ソフトウエア開発のソニックガーデン(東京・世田谷)が提供する仮想オフィスツール「Remotty(リモティ)」が目指したのも同様の空間だった。
同社のRemotty事業責任者を務める八角嘉紘氏は、「これまでリモートワークは1人で働いているという孤独感に襲われたり、雑談や相談ができずコミュニケーション不足に陥ったりしがちだった。これらを解消して、オフィスで働いているのと変わらない環境を実現しようと考えた」と語る。
オンライン会議ツールZoomを使えば顔を見て話すことはできるが、つなぎっ放しにするのは現実的ではない。ビジネスチャットツールSlackを使えばグループでコミュニケーションはできるが、決まったテーマに沿った情報交換が主で、雑談などはしにくい。既存ツールでは補えない部分を補うツールをつくるため、まず、オフィスで行われるコミュニケーションの種類を書き出し、それを同期的か非同期的か、オープンかクローズドかによって4つの象限に分類した。それぞれの象限に、オフィスで使われるツールと、デジタルで使われる既存のツールを当てはめた(図1、2)。
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すると、同期的でオープンなコミュニケーションは、リアルではデスク周りなどで盛んに交わされるが、デジタルにはそれに適したツールがなかった。開発すべきツールはこのポジションだった。
「イノベーションには偶発性やオープン性がキーワードになる。それには雑談や相談などが活発に行われることが必要で、そこにこだわって機能を開発した。同期的でオープン以外のコミュニケーションは、Remottyがハブとなって、ZoomやSlackなど既存のツールにアクセスして使う」(八角氏)
人の会話に割って入ることも可能
Remottyにログインすると、画面には“出社”している人全員の画像が並び、みんなの顔を見渡せる。出社中はずっとRemottyを起動して、他のソフトを使って作業をするときは、Remottyはバックグラウンドで動作させておく。画像は2分ごとに撮影・更新され、離席していると顔は写らず背景が映る。
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