
新型コロナウイルスの感染拡大以降、テレワークは確実に浸透した。その先には「ワーケーション」という新しい働き方がある。リゾートで休暇を楽しみながら、テレワークで仕事もこなす。政府も後押しするが、ワーケーションは今後、広がるのか。いち早く取り組んできた日本航空(JAL)などでは、業務効率の向上が期待できるという
新型コロナウイルスに対応した緊急事態宣言後、多くの企業が在宅勤務を本格的に導入した。日本テレワーク協会専務理事の田宮一夫氏によれば、テレワークに関する問い合わせも急増し、2020年2月までは1日当たり10件程度だった電話相談が、3月には5000件、4月には9000件に上った。同協会のWebサイトも、1日200件程度の閲覧数が、最大で86万件に達したという。
このテレワーク普及の動きは、一過性のものだろうか。田宮氏は、日本の「少子化」「働き手不足」という大きな課題の解決にも、テレワークは役立つという。「シルバー世代をはじめ、育児や介護で離職していた人も、テレワークであれば就業できる可能性が広がる」(田宮氏)。そうであれば、今後、新型コロナ禍が収束したとしても、テレワークが急に縮小し、コロナ以前の働き方に戻るとは考えにくい。
テレワークの先には、さらに新しい働き方「ワーケーション」という可能性も広がる。ワーケーションとは、ワーク(仕事)とバケーション(休暇)を組み合わせた造語で、リゾートなどで休暇を楽しみながらテレワークで働くことだ。20年7月、環境省は、国立公園や温泉地でのワーケーション推進事業で、約500の団体を採択したと発表。菅義偉官房長官も、「Go To キャンペーン」の促進とからめてワーケーションの普及にも取り組む考えを示した。
このワーケーションをいち早く導入してきたのが、日本航空(JAL)だ。同社は17年7月、休暇取得促進のためにワーケーションを提案し「長期休暇を取りにくい」「帰省先でもテレワークをしたい」という社員の声をもとに、休暇中にあらかじめ決めた日のみの業務を認めた。社内の啓発のために、1年目には和歌山県の白浜町での体験ツアーや社内報への掲載、役員が実際にワーケーションを体験するなどして、理解促進を進めた。
【第2回】 富士通、キリン、ぐるなび、PayPay オフィス改革、見えた新潮流
【第3回】 働き方改革「ABW」に再注目 オフィスに必要な要素が変わる
【第4回】 アフターコロナのオフィスは「行く意味」が問われる
【第5回】 スターバックス×JINS「Think Lab」に学ぶ 最高の集中スペース
【第6回】 在宅ワーク対応住宅へ旭化成も本腰 個室派・LDK派向けに3タイプ
【第7回】 JALも推進 生産性20%改善、ワーケーションは普及するか?
【第8回】 コロナ後に必要なのは「寝ちゃえるくらい気持ちいいオフィス」だ
仕事のパフォーマンスが20%上がる
このコンテンツ・機能は有料会員限定です。