
働き方の祭典「Tokyo Work Design Week」オーガナイザーであり、鎌倉にあるプライベートワークスペース「北条SANCI(さんち)」の支配人も務める&Co.代表の横石崇氏と、近年、オフィスの設計を多く手掛ける設計事務所、SUPPOSE DESIGN OFFICE(サポーズデザインオフィス)代表取締役の吉田愛氏が、働き方とオフィス設計の視点からアフターコロナのオフィスについて語った。
横石 「北条SANCI(さんち)」は、2018年7月にオープンしたプライベートワークスペースです。鎌倉の鶴岡八幡宮近くにある、以前は料亭だった築90年の物件をリノベーションした空間です。クリエイティブラボのPARTYやCEKAIと、共同のアトリエを持てるといいなと、物件をいくつか見ていたら盛り上がって、実現に至りました。リノベーションは、スキーマ建築計画の長坂常さんが手掛けました。
吉田 いろんな企業が入居しているんですか?
横石 そうですね。招待制ではあるのですが、雑誌「WIRED」のサテライト編集部や、コピーライターやエンジニアといった20組ほどが入居しています。
都心にある大型のコワーキングスペースだと、同じ空間にいても知らない人に話しかけるのは気が引けるじゃないですか。でもここには、人との距離が近く、家と仕事場をミックスしたような場で、「最近は何してるんですか」と話しかけるのに抵抗がない雰囲気があります。最近は、どんなオフィスを設計していますか?
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吉田 新型コロナウイルス感染症の拡大以前から、単に働くためだけではない空間や機能を持ったオフィスの依頼が多いですね。19年4月に完成した米スラック・テクノロジーズの日本法人であるSlackJapanの東京オフィスは、ビルの窓からセットバックしたところに、ひさし付きの縁側のような、自由に場所を変えて仕事ができるスペースを設けました。
17年に、SUPPOSE DESIGN OFFICE(サポーズデザインオフィス)の東京オフィスであり、飲食店でもある「社食堂」をつくって以降、こういったオフィス設計の仕事が増えてきました。社食堂はもともと、お昼はスタッフが外出していることも多いので飲食店として活用し、お客さんが少ない夜はオフィスとして使う空間を増やすという、空間をフレキシブルに使うことで場所を効率的に使いこなすという考えで設計しました。
横石 北条SANCIは、新型コロナ以前は、都心からやって来る人が多かったですが、最近は、鎌倉在住の人がよく使ってくれています。ワーケーションとまでは言いませんが、気分転換としてここに来て働くという使い方から、地元に住む人が歩いてやって来て、ちょっと仕事をして帰るような使い方に変わっています。徒歩圏内で消費も労働もこなすようなローカルワーカーが増えました。
吉田 緊急事態宣言中は社食堂も休業して、会社もリモートワークにしました。私は、鎌倉で運営している「鎌倉はなれ」というゲストハウスを拠点にして、リモートで働く機会が多くなりました。
今、20年秋に神田に移転する、ほぼ日の新オフィスの設計をしていますが、今後のオフィスの在り方がまだ明確でない過渡期だからこそ、フレキシブルさが欲しいというオーダーがありました。だから、作り込むのではなく、可変性のある家具や、遊牧民みたいに移動できるオフィスになります。ソファも、ウレタンをバンドで留めて使うようなもので、オリジナリティーもあるし、もし位置を変えたければすぐ対応できる。「変化に対して強いオフィス」を考えています。
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