
富士通やキリンといった大企業でも、オフィス改革などを表明する例が増えてきている。第2回は前出2社にぐるなび、PayPayを加えた4社の取り組みを紹介していく。共通するのは「共創空間」。例えばぐるなびは、楽天本社の二子玉川への移転を指揮した新社長が作戦スペース「ハドルポイント」を導入する。アフターコロナに向けた新たな働き方へと各社が舵(かじ)を切っている。
新型コロナウイルス感染拡大を奇貨として、新たな働き方、新たなオフィスへと舵(かじ)を切る企業が徐々に増えてきている。キリンホールディングスは2020年7月1日から国内全グループ社員約2万人を対象に、「『働きがい』改革 KIRIN Work Style 3.0」と題した働き方改革をスタート。富士通は20年7月6日、テレワークを常態とし、オフィス面積を半減すると発表した。特集の第2回では、アフターコロナの働き方に先手を打った企業の狙いを紹介していく。
【第2回】 富士通、キリン、ぐるなび、PayPay オフィス改革、見えた新潮流
【第3回】 働き方改革「ABW」に再注目 オフィスに必要な要素が変わる
【第4回】 アフターコロナのオフィスは「行く意味」が問われる
【第5回】 スターバックス×JINS「Think Lab」に学ぶ 最高の集中スペース
【第6回】 在宅ワーク対応住宅へ旭化成も本腰 個室派・LDK派向けに3タイプ
【第7回】 JALも推進 生産性20%改善、ワーケーションは普及するか?
【第8回】 コロナ後に必要なのは「寝ちゃえるくらい気持ちいいオフィス」だ
飲食店情報サイトを運営するぐるなびも、他社に先んじてオフィス削減を表明した企業の1つだ。本社面積を4割削減し、本社、全国営業所の約1600人の従業員は、リモートワークをベースにその日の業務内容に応じて出社とリモートワークを柔軟に選択できる働き方にする。
ぐるなびがオフィス削減を決断した理由の1つが、出社率だ。指標としていた出社率50%を下回り、6月以降の出社率は約35%(東京のみだと約20%)。テレワークでの業務遂行にスムーズに移行できたことが、スピーディーな決断へとつながったという。
新型コロナ前に、すでにフリーアドレス化を進めていた点も大きかった。18年5月、ミッドタウン日比谷に一部移転した際、営業部にフリーアドレスを導入しており、この流れをさらに加速していくことになる。
今回表明したオフィス面積の削減は、前述の通り40%。だが、座席数の削減はこの数字を大きく上回る75%。この差こそが、ぐるなびの新たなオフィスへの考え方を示している。
随所に「ハドルポイント」を設置
アフターコロナに向けて、オフィスの位置づけを「ワークスペース」から、新たな価値をともに創造する場へと転換させる、というのがぐるなびの狙い。「フリーアドレスをベースとしながら、コラボレーティブスペース化させ、コミュニケーションを活性化させるハドルポイントを設置していく」(ぐるなび)。オフィス面積と座席数の削減幅の差は、各自の机を減らす代わりに共有スペースを増やしていく、ということを意味する。
ハドルとは、アメリカンフットボールに由来する用語で、プレー中のわずかな時間を使って選手が集まる作戦会議のこと。転じて、案件についてちょっとした確認がある際などに、関係者が数人すぐに集まって短時間のミーティングができる空間のことを、ぐるなびではハドルポイントとして今後オフィス内に設置していく。
ハドルは19年6月に新社長になった杉原章郎氏から出てきた言葉だ。杉原氏は、ぐるなびの筆頭株主となった楽天の創業メンバーの1人。楽天本社の東京・二子玉川への移転なども指揮した、オフィスづくりのエキスパートだ。ハドルポイントも、楽天から持ち込まれたノウハウだという。
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