親の住環境を改善するためのリフォームで気を付けたいのが、事前に直すべきポイントを把握しておくこと。さらに工事する内容も優先順位をつけて進める必要があり、場合によっては工事のプロに頼んだ方がよいだろう。5つの事例を前編と後編に分け、どのような点に注目すればいいのか、解説する。
※日経トレンディ2020年9月号の記事を再構成


親の住環境を改善するため、リフォームを検討するのはいいことだが、直すべきポイントを把握してからでないと「こんなはずじゃなかった」という結果になりかねない。一級建築士で住宅リフォームコンサルタントの尾間紫氏は「無理な間取り変更やIHキッチン化などを急に行うと、今までできていたこともできなくなってしまう可能性がある。親と工事内容をしっかり相談して、元気なうちから手を打つべき」と語る。
さらに尾間氏は「満足いくバリアフリーリフォームを行うには、工事する内容の優先順位がある」とアドバイスする。1番目は危険箇所を取り除くこと、2番目はQOLを向上させる工夫をすること、3番目は日々を楽しく過ごせるようにすることだ。自分でできるちょっとした修繕でも1番目までは解決できるが、2番目、3番目もかなえたい場合は親の状況を鑑みつつ本格的な工事のプロに頼んだ方がいい。どのような点に注目すればいいのか、事例をもとに解説する。
1の事例は、高齢者にとって快適なスペースの使い方を追求したもの。広い家は物が多くなってしまいがちで、管理するだけでも大変。ムダな空間がないことが理想だ。東京ガスリノベーションの担当者は「来客を重視した立派な家である一方、高齢者にとっては住みづらい環境になっていた」と振り返る。実際、客間も備えていたが、だんだんと使われなくなり物置になってしまっていた。玄関ホールが非常に広いことも、外からの冷気が家の中まで侵入する原因になっており、寝室にしていた和室も寒さが厳しかったという。
そこで、まず玄関ホールには引き戸を設置。幅広いスペースでも2枚の引き込み戸にすることで空間を仕切るようにし、冷気を玄関で留めた。和室は洋室へと変え、カーペット敷きにして暖かさを保てるように。もともと玄関の方から順に和室、客間、LDKが並んでいたが、物置と化していた客間を潰すことでLDKを広げ、客間だった場所にはソファーを置き、くつろげる空間へと変貌させた。
1「お客様用」の立派な家から快適に過ごせる空間に
<基本情報>
総工事費:1250万円、総工事期間:約3カ月、総工事床面積:67.36平方メートル、築30年、施工会社:東京ガスリノベーション
2の事例は、生活空間をコンパクトにまとめ、移動しやすい動線を確保したケース。高齢になると夜中にトイレで起きることも増えるため、特にトイレは寝室の近くにあった方がいい。「足が不自由になったとしても、距離が近かったり、手すりがあったりすることで『一人でトイレに行ける』と思えるのは親にとっても大切」(尾間氏)。
この事例では、間取りを一つずつずらしていくことで寝室から水回りが遠いという問題をクリアした。玄関すぐ横の北からトイレ、浴室、洗面室、納戸の順番だったところ、納戸を潰すことでトイレ部分をクローゼットに、浴室部分をトイレに、洗面室部分を浴室に、納戸部分を洗面室に変更。寝室の目の前に水回りがまとめられた。
バリアフリーリフォームでは、段差につまずいて転んだりすることがなくなるよう床をフラットにすることも必須要件だ。この家には小上がりの和室があり、その段差は20センチメートルほど。床を下げる工事は非常に難しいようにも思えるが、東京ガスリノベーションのプランナーによれば「大掛かりな工事にはなるが、バリアフリーリフォームではよくある」といい、この事例でも真っ先に行われた。こうして和室は足を悪くしていた依頼者の妻でも使える場所となり、寝室を移動できたことで、もともと寝ていた部屋が北向きで寒く、道路に面していてうるさいという問題の解決に至った。
2 水回りを寝室の前にコンパクトに集中させる
<基本情報>
総工事費:822万円、総工事期間:約2カ月、総工事床面積:51.00平方メートル、築約25年、施工会社:東京ガスリノベーション
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