シニアの運転不安を軽減する安全運転支援機能は、軽自動車にも装備されるようになってきた。サポカー補助金もあり、コスパがよく運転もしやすい軽自動車が選択肢に入る。ダイハツタントと日産ルークスを、自動車ライターがチェックした。
※日経トレンディ2020年9月号の記事を再構成
高齢ドライバー向けの新車を検討する場合、コスパは当然重要。さらに事故防止の観点から、扱いやすいサイズのクルマを選ぶことが大切だ。
そこで有力な選択肢になるのが、軽自動車である。持ち味の取り回しの良さと高い機能性に加え、さらに安全性も飛躍的に向上している。近年は経済性の魅力や小型車需要の拡大から軽自動車が見直されており、メーカー間の競争の激化も背景にある。
注目される先進の安全運転支援機能についても、実は搭載内容が乗用車と遜色ないレベルになっている。例えば、ホンダの「ホンダセンシング」は、乗用車と軽自動車の機能差を設けないと明言。軽自動車を得意とするダイハツ工業の「スマートアシスト」の最新システムは、軽自動車「タント」と小型SUV「ロッキー」で共通のものだ。最新の最良の技術を広く搭載しようという姿勢は、他社も同様の傾向にある。
しかもサポカー補助金では、乗用車購入時の補助が最大10万円なのに対して、軽自動車でも最大7万円。もともと価格を抑えている軽自動車は乗用車ほどの値引きは期待できないだけに、補助金の存在は大きい。
「安全な軽」はここまで進化
では、コスパと安全性を兼ね備えた最新の軽自動車は、乗り心地や使い勝手など“クルマとしての魅力”はどうなのか。今回は軽スーパーハイトワゴンの2台をテストした。
軽スーパーハイトワゴンとは、背を高くして車内空間を広くしたもので、今の軽自動車市場の中心的役割を担う。日本で最も売れている軽自動車のホンダ「N-BOX」も同ジャンルになる。
「ルークス」(日産自動車)は、20年3月に発売されたばかりの最新型、三菱自動車工業の「ekスペース」は共同開発による姉妹車だ。大幅刷新を図った新型車だけに、乗り心地や静粛性などクルマの基本性能が飛躍的に向上。内外装のデザインもおしゃれで若々しくなった。長距離運転を楽しむなら、自動運転支援機能の「プロパイロット」装着車を選べば、運転中の疲労を軽減することができる。
日産の先進技術が満載 “イマドキ軽”の代表格
「タント」(19年7月発売)は助手席側の柱を無くして、ドア開口部の最大化を図る「センターピラーレス構造」が特徴。子育て世代からの支持の厚い一台だ。運転席のロングスライド機構を備え、車外に出ずに後席に移動することや樹脂製テールゲートによる楽々の開閉動作などファミリーの使い勝手を追求。特に新型は高齢者にも配慮し、機能を高めた。先進の安全運転支援機能は、次世代「スマートアシスト」を搭載。
高齢者への配慮が手厚い新時代のファミリーカー
小型でスクエアな形状なので、車両感覚をつかみやすい点は、高齢ドライバーにも魅力的に映るはずだ。
背の高さを生かした広いガラスエリアも特筆すべき点で、特にフロントガラスは、ガラス形状やピラー(柱)の位置を工夫することで、死角は極力削減され視界も広い。これならば、前方左右の確認がしやすく、出合い頭の事故の予防にもつながる。今回のテストでは、タントの方が視界に若干優れると感じた。
2台共にドア開口部が大きく、リアはスライドアなので乗降性に優れるが、ここでタントの助手席ピラーレス構造が本領を発揮する。邪魔な柱がないので、前傾姿勢で乗り込んでも頭をぶつける心配がないのだ。さらに高齢者が乗降しやすいように、ドアを開けると自動で出てくる「ミラクルオートステップ」や、しっかりつかめる乗降用ハンドル「ラクスマグリップ」などの用品開発にも力を入れたのも強みとなる。これらは購入後の後付けも可能だ。
今回は都市部の街中で試乗。2台とも自然吸気エンジン車で、大人3名が乗車したがパワー不足を感じるシーンはなく、走行中の車内も比較的静かで会話もしやすかった。もちろん、乗り心地も良い。後席もスライド機構があり、ラクな姿勢が取りやすいことも魅力的だった。
それぞれの優位点を挙げるなら、ルークスは質感とデザイン性、タントは機能性となるだろうか。高齢ドライバー向けという視点では、前述の運転の操作性や乗り降りのしやすさなどからタントに軍配が上がる。いずれにしても総合評価は高く、最新の軽自動車のレベルの高さを実感した。
ただ、先進の運転支援機能はあくまでサポート役にすぎない。過度に頼らず、あくまで安全運転を心掛けることが大前提だ。
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