新型コロナウイルスの影響で進化したのが、ECの機能だ。アパレル分野でも、試着しないとわからないというECの欠点を補うサービスが続々登場し、知名度を上げている。家にいながら似合うメガネを作れる「オーマイグラス」、オンライン接客システム「スタッフスタート」を取り入れたAOKIの取り組みを取材した。
※日経トレンディ2020年8月号の記事を再構成
デジタルフィッティングやバーチャル試着など、アパレル業界ではEC比率を上げるために様々な創意工夫がなされている。その中で、オンライン上の“接客”を進化させることで、買い物を促す新しいタイプのECが次々と誕生している。
LINE相談と試着サービスが秀逸な「オーマイグラス」
手元のメガネに合わせ、商品選びから購入までウェブで完結するのが「オーマイグラス」。2012年に、まずECサイトを立ち上げ、14年に直営店をオープンしたベンチャー企業だ。今では、日本最大級のメガネECサイトに成長し、東京や大阪などの大都市を中心に全国8店舗に拡大している。
最大の特徴は、5本のメガネを5日間、ゆっくり自宅で試着できるサービスだ。さらにLINEチャットで自分に似合うメガネをプロに相談できるサービスがあり、2つを組み合わせることで、リアル店舗にも無い利便性が生まれている。サイトに並ぶ約1万種類の商品から選べる選択肢の広さに加えて、自宅での試着ならいろいろな服装でコーディネートを試せる。
注文の仕組みはシンプルで分かりやすい。「メガネの形」「価格帯」「顔型」などの条件でフレームを絞り込み、5本まで選択。数日後に自宅にフレームセットが届いた。ビジネスで使いやすい黒色を中心に、普段は選択肢に入らない赤いフレームを入れ込んでみた。店舗では人目を気にしてできない選び方もできるのがいい。
気に入ったものがあれば、ECサイト上でチェックを付け、レンズの選択に進む。既にメガネを持っている場合は、試着商品と一緒に送付することで、同じ度数情報で作製してもらえる。送れるメガネを持っていなければ、医療機関で測定した度数情報を登録するか、オーマイグラスを含む近隣のリアル店舗で検眼した結果を使うこともできる。返却後、レンズの入ったメガネが郵送されてくる、という流れだ。試着したすべての商品を返品する場合は、手数料1650円(税込み)を支払う必要がある。
レンズは一人ひとり検眼し、それに合わせて加工する必要がある。これがECの課題だった。その検眼工程のハードルをできる限り下げたことが奏功した。
ECサイトの売り上げは、ここ数カ月で2倍に伸びた。社長の清川忠康氏は緊急事態宣言下の状況を振り返り、「自宅で過ごす時間が増え、コンタクトレンズよりもメガネで過ごす人が増えたのでは」とみている。
LINEチャット相談では、店舗で働くスタッフがメガネ選びの相談に乗ってくれる。試しに、「仕事用のシンプルなメガネを探している」と相談を持ち掛けたところ、数十分後に「かけ心地の軽い、軽めのメタル製フレームがおすすめ」と返信が来た。商品コードが分かる具体的な一本も提案してくれ、選ぶ手間を減らせるのが助かった。文字だけでなく、顔や服の写真を送っても応えてくれる。
オーマイグラスでしか買えない商品もある。「ネット販売がメインで販売効率が良いため、リーズナブルな価格で提供できる」と清川氏。国産のプライベートブランド(PB)の「Oh My Glasses TOKYO」「TYPE」などを展開。PBは、売り上げの半分以上を占めるという。特に軽くて耐久性や装着感に優れたベータチタン製フレームや、本田圭佑氏がサポートするサングラスブランド「PAGE」が人気を博す。
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