コロナ禍で注目されたのが、生鮮食品の通販だ。特に、スーパーで買うよりも「鮮度よし」「質よし」な鮮魚が買えるネット通販がここに来て急増中。その実力を人気シェフと共に確かめた。
※日経トレンディ2020年8月号の記事を再構成
「市場で仕入れた魚を即日配送」「水揚げしたばかりの魚を漁港から最短翌日に直送」─。鮮魚を扱うネット通販の利便性が急速に高まっている。うまい魚が自宅でも手軽に食べられるとあってリピーターも少なくない。
背景にあるのが、新型コロナウイルスの感染拡大だ。多くの飲食店が営業を自粛した影響で、業務用鮮魚の需要が一時激減。販売先を失った業者や漁師などが、巣ごもり生活を強いられていた一般消費者をターゲットにネット通販へ続々と乗り出したのだ。おかげで本来飲食店以外には出回らない上物や、地方でしか流通しない珍しい魚が買えることもある。
そこで、今どきの鮮魚ネット通販の実力を知るため、中でも独自の特徴を打ち出す3つのサービスで実際に注文し、鮮度などを確かめてみた。魚のうまさを引き出すため、東京・築地のフランス料理店「Green Kitchen」に協力を仰いだ。小島三生シェフはほぼ毎日豊洲市場へ通い、鮮魚には一家言ある。
「イワシなどを1匹単位で買うのがお勧め。鮮魚は、内臓を取り出して冷蔵しておけば、数日は鮮度が保たれます。毎回スーパーで刺し身を買うより経済的」(小島氏)
0時に注文し、13時に到着するというスピード
まず最初に試したのは、2020年4月にスタートしたばかりの「うおポチマルシェ」だ。エリアは都内7区(目黒・品川・港・渋谷・世田谷・大田・中央)に限られるが、0時までに注文した魚を同日の13時〜17時に届けてくれる(市場休場の関係で火曜・土曜日の注文は翌日配達)。注文したのは、5〜10月が旬の「マイワシセット」(5匹、税込み550円)、夏の川魚の代表「鮎セット」(3匹、税込み760円)など。
うおポチマルシェ(フーディソン)
届いたマイワシを見た小島シェフは、「リーズナブルなのに鮮度が良く、ものも良い。刺し身が絶対にお薦め」と話すと、マイワシをあっという間に三枚に下ろした。
同時に買った養殖の国産本マグロと合わせて盛り付けたマイワシを見て、まず気付くのは断面の美しさである。たまにスーパーで売っているマイワシの刺し身は少し茶色いことがあるが、皮に近い所がきれいな赤色をしていて艶やかで食欲をそそる。実際に食べてみると、舌の上でとろけるような食感がたまらない。
運営元であるフーディソンは、飲食店向け鮮魚仕入れネットサービス「魚ポチ」でここ数年急成長しているスタートアップ企業だ。同社は、全国20以上の産地市場をつなぐ独自の仕入れルートを強みとする。流通量が多い定番魚種は豊洲市場の卸業者(荷受けとして全国から仕入れた魚を競りにかける)、加工度合いの高い魚種は仲卸業者(卸業者から買った魚を飲食店に卸す)、珍しい魚は産地の漁港からといった具合に約1800種類以上を柔軟に仕入れる。
うおポチマルシェは、都内約1万5000店の飲食店向けと合わせて調達した鮮魚を、同じく飲食店向けの自社物流網を活用して届ける点に特徴がある。「一般的なスーパーよりも半日から1日分は早く、家庭の食卓に乗せられる」(執行役員の伊藤貴彦氏)。マイワシの美しさには理由があったのだ。商品の大半は、自社の物流センターなどで一般家庭でも扱いやすいサイズにカットしたものなのもありがたい。
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