新型コロナウイルスの感染拡大により2020年春に長期休業を強いられたパルコが、ECサイトで前年比4倍以上を売り上げ、店舗に対する打撃を一部カバーした。コロナ禍とはいえ、特別な施策を打たなくてもECサイトの利用が増えたのは、日ごろからユーザーとのエンゲージメント構築に力を入れてきたからだ。アプリを通してユーザーとのつながりを持続させ、ビジネスを安定させるパルコの仕組みを探った。
店舗スタッフが接客を通し、顧客をアプリへと誘う
「2020年春の緊急事態宣言で店舗が休業していたにもかかわらず、多くのアプリユーザーが残ってくださっていて驚いた。ユーザーの中には店舗が休業しているのに、アプリを起動して気にかけてくださる方もいた」とパルコデジタル推進部業務部長の安藤彩子氏は語る。
新型コロナウイルスの猛威は、小売業界に大きな打撃をもたらした。パルコも例外ではなく、20年の緊急事態宣言時に多くの店舗が長期休業を強いられた。店舗が閉まれば連鎖的にアプリの利用頻度も減り、ユーザーが離れていくのは当然のように思える。だが、パルコの場合はそうではなかった。
店舗が長期休業している間の公式アプリ「POCKET PARCO」のMAU(月に1回以上アプリやウェブなどのオンラインサービスを利用したユーザー数)を見ると、20年3月には前年比105%、長期休業が始まった4月は91%、5月は73%、営業再開後の6月には91%となっている。その後MAUは順調に数字を戻し、8月には104%と完全に回復。店舗の営業再開後にアプリユーザーが戻ってきた。

実はパルコはコロナ禍において、特別なアプリ対策は打たなかったという。それでもMAUを大きく落とさず回復させたのは、普段からユーザーとのエンゲージメントが構築されていたからだ。ユーザーとのつながりを高めるため、パルコでは日常的にどのような取り組みを行っていたのか。
POCKET PARCOに搭載された機能は、各店舗に関する記事やコラムなどの情報提供、ポイント機能、オンラインストアやアプリ内コード決済など実に多彩だ。それだけにアプリの情報を整理して、個々のユーザーに最適なアプリの使い方を伝えなければ、かえって使い勝手が悪くなる。
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