プロマーケターが選ぶ 「利他」時代に仕事のあり方を考える6冊(画像)

マーケティング分野で活躍する仕事人10人がお薦めの本を紹介する本企画。今回はアスクル取締役兼CMOの木村美代子氏と、ファクトリエ代表でライフスタイルアクセント社長の山田敏夫氏が3冊を厳選した。コロナ禍や災害に世界が揺れる中、自分の仕事や会社と社会のあり方を考えさせられる名著が並んだ。

【この記事で紹介する書籍】
『食卓の経営塾 DEAN&DELUCA 心に響くビジネスの育て方』
『利他のすすめ:チョーク工場で学んだ幸せに生きる18の知恵』
『「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考』
『今ここをどう生きるか 仏教と出会う』
『救う力 人のために、自分のために、いまあなたができること』
『たゆたえども沈まず』

前回(第1回)はこちら

木村美代子氏、お薦めの3冊


プロマーケターが選ぶ 「利他」時代に仕事のあり方を考える6冊(画像)

アスクル株式会社 取締役 兼 CMO(最高マーケティング責任者)
1988年プラス入社。93年、創業メンバーとして、アスクル事業推進室に配属。99年アスクルの分社独立と同時に同社に入社。マーチャンダイジング、カタログ制作、Webマーケティングを担当。個人向けeコマースのアスマル社長などを経て、2016年CMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)就任
詳しいプロフィル


価値をつくるのは“看板”でなく“人”

「食卓の経営塾 DEAN&DELUCA 心に響くビジネスの育て方」
横川正紀/ハーパー・コリンズ・ジャパン、2020年
1600円(税別)

 ニューヨーク発の食料品チェーン「DEAN&DELUCA」の日本版を2003年に日本でスタートし、失敗や試行錯誤を繰り返しながら成長させてきたウェルカムグループ代表の・横川正紀氏の著書。価値をつくるのは看板でなく人であることを、ブランドのフィロソフィー(哲学)と個性を大切に、共感されるブランドをつくり上げてきた過程から学べる。

 共感されるブランドをつくる上で大切なことの1つめは、フィロソフィーの根っこにある本質を見ること。当初、米DEAN&DELUCAのカッコよさを表層的にまねしていた同氏は、創業者であるジョルジオ・デルーカ氏のアドバイスを機に「食を通じて誰かを感動させたい」という思いに立ち返り、日本食も取り入れた品ぞろえや店舗の提案に舵(かじ)を切ったという。フィロソフィーと個性を持った個人店に学び、「店に人格を与えること」「顔を与えること」が顧客の共感を呼ぶ。

 2つめは、食卓を囲みたくなるような共感できる仲間たちとベクトルを合わせ、ビジネスを進めること。共に未来地図を描きながら、「好きなこと」「やりたいこと」を積み木のように重ねて方向性を合わせていることを知った。

 また、「リアル」な感性を磨くには「体験」を積み重ねることが大事とし、常に自分をアップデートし続けている横川氏の姿勢そのものも、共感を呼ぶDEAN&DELUCAブランドに映し出されていると感じた。

アフターコロナ時代こそ大切にしたい「利他」の考え

「利他のすすめ:チョーク工場で学んだ幸せに生きる18の知恵」
大山泰弘/WAVE出版、2011年
1540円(税込み)

プロマーケターが選ぶ 「利他」時代に仕事のあり方を考える6冊(画像)

 コロナ禍で変化する今こそ、「エゴイズム(利己主義)」から「利他主義」を大切にする共生の社会が求められているのではないか。この本は、障害者雇用に取り組んだ日本理化学工業の大山泰弘会長による「利他のすすめ」。同社は法政大学大学院政策創造研究科の坂本光司教授が執筆した書籍「日本でいちばん大切にしたい会社」で紹介された。

 知的障害を抱えた2人の少女を採用して以来、50年もの間、知的障害者を雇用してきた大山会長の経験談から、人の役に立つことをする「利他」の積み重ねが「幸せな自分」つくることを学ぶ。人間はつい「自分のため」を考えてしまうが、自分の置かれた場所で人の役に立てるように精いっぱい努め、人から必要とされることが「自己実現」につながるということだ。

 特に、2カ所から工場誘致を受けて迷った際、「どちらが世のため人のためになるか」で判断したことが、数年後、ホタテ貝殻入りチョークの開発に結び付いた話は印象に残った。YKK創業者の吉田忠雄氏が唱える「善の循環」(「他人の利益を図らずして自らの繁栄はない」という考え)にも通じる。アフターコロナ時代にこそ大切にしたい考え方だと思う。

美術の授業から「自分なりの視点」を生み出す方法を学ぶ

「『自分だけの答え』が見つかる 13歳からのアート思考」
末永幸歩/ダイヤモンド社、2020年
1800円(税別)

プロマーケターが選ぶ 「利他」時代に仕事のあり方を考える6冊(画像)

 著者は中学・高校の現役美術教師。本書では、6つのアート作品を題材に課題を解きながら、アートは何かを考える探求型の授業を体験する。数学が「正解=『太陽』を“見つける”能力」を養うのに対し、美術が扱うのは「雲」。常に形を変え、一定の場所にとどまらない雲は人によって見方が違うように、「自分なりの答え(=『雲』)を“つくる”能力を育むこと」だというのが著者の考えだ。

 さらに、「『自分の興味・好奇心・疑問』からスタートし、自分のものの見方で世界を見つめ、好奇心に従って探究を進めることで『自分なりの答え』を生み出すことができれば、誰でもアーティストである」と著者は言う。

 他人が定めたゴールに向かって正解を効率的に追い求めるのではなく、内なる自分の声に耳を傾け、自分の好奇心や内発的な関心から価値を創造するアーティスト的な思考で「自分なりの答えをつくる力」こそが、人に感動を与えるビジネスを生み出すことにつながるのではないか

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