
テレビ朝日系列の北陸朝日放送(石川県金沢市)は2020年8月24日から、石川県内の流通企業3社と連携し、テレビCMから店舗に誘導する「販促放送サービス」のトライアルを開始した。新型コロナウイルス感染拡大の影響で売上高が前年比4割減となる中、エリアマーケティング支援企業への変革を狙う。
<前回(第6回)はこちら>北陸朝日放送の販促放送サービスは、パーチェスファネル(購買に至るまでの心理プロセスの変化)における認知、興味・共感、購買、ロイヤル化の4段階にテレビCMが与える影響を、トータルで効果分析するサービスだ。「広告主はテレビCMの効果に疑問を抱き始めている。従来は認知を取ることが主な役割だったが、それだけではニーズを満たせない。効果を購買データで示すのが最も説得力があると考えた」と、北陸朝日放送エリアイノベーション推進室の伊藤祐介副部長は言う。流通企業や調査会社と連携することで、テレビCMの“売る力”を可視化できる広告商品を開発した。
仕組みはこうだ。まず、ローカル情報番組「ゆうどき」のレシピコーナーで、広告主企業の商品を使ったレシピを提案。加えて1分間のインフォマーシャルを制作し、同じ番組内で放送する。地元密着型の番組で放送することで親近感を醸成し、石川県在住者の関心を集める。テレビの従来からの役割である認知獲得と、番組の出演者が広告商品を紹介するインフォマーシャルで興味・共感を誘う。食品メーカーが主なターゲットだ。
さらに、ここから購買へとつなげるために、番組放送中に商品を取り扱うスーパーの一覧を紹介する。対象となるスーパーはマルエー(石川県白山市)が石川県内に26店舗を展開する「マルエー」、どんたく(石川県七尾市)が石川県内で13店舗を展開する「どんたく」、ユニーが石川県内に展開する「アピタ」「ピアゴ」の4チェーンだ。「その3社と組むことで、石川県のほぼ全域を抑えられる」と伊藤氏は言う。石川の食材を使ったレシピを提案するため、スーパーとの相性が良いと考えた。
レシート登録アプリ活用で来店促進
来店促進のもう1つの施策として、アプリ開発会社のリサーチ・アンド・イノベーション(東京・港)が展開する、レシートのスキャンでポイントを取得できるアプリ「CODE」を利用する。CODEは利用者が買い物でもらったレシートと商品のバーコードをスマートフォンで読み取ると、読み取った数に応じてミニゲームに挑戦でき、そのゲームの結果でポイントがもらえる。取得したポイントはNTTドコモのポイントサービス「dポイント」やイオンの電子マネー「WAONポイント」などと交換できる。北陸朝日放送の放送エリア内には2万5000人の利用者がいるという。同アプリ利用者の69%は女性のため、主婦をターゲットとするスーパーとの親和性は高い。
CODEには「クエスト」と呼ぶマーケティング機能がある。これは、広告主企業が販促したい商品にポイントを多く付与するインセンティブを提供できる。それにより、アプリ利用者に該当商品の購買を促す。北陸朝日放送はインフォマーシャルの中でCODEを紹介し、広告する対象商品の購入でポイントを得られることを告知する。購入者がバーコードを登録すれば、購入者に絞った販促施策でリピート購入を促すこともできる。継続的に該当商品を購入しているかといったリピート率の分析も可能だ。
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