売上3.2倍のコアラマットレス CM効果分析でつかんだ早朝ニーズ(画像)

オーストラリア発のマットレスD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)ブランド「コアラマットレス」が好調だ。2020年7月に同社初のテレビCMを関東エリアで放送し、サイトのアクセス数は前年同月比2.9倍、売り上げは同3.2倍と大幅増となった。自社でそろえたデータを使い、プランニングや効果検証に生かしている。

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寝具のD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)ブランド「コアラマットレス」を展開するKoala Sleep Japan(東京・港)は、テレビCMを効果的に活用して売り上げを大きく増やした
寝具のD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)ブランド「コアラマットレス」を展開するKoala Sleep Japan(東京・港)は、テレビCMを効果的に活用して売り上げを大きく増やした

 コアラマットレスを展開するオーストラリアのコアラスリープは、極めてマーケティングドリブンな会社だ。ECサイトを通じて商品を直販するD2Cは、マーケティングと経営が直結する。経営者が直接マーケティングの指揮を執るのはそのためだ。本国オーストラリアにはデータ分析の専門チームを設置している。日本事業でも同チームと連携しながら、マーケティングの効果測定をしてきた。日本法人のKoala Sleep Japan(東京・港)の代表を務めるアダム翔太氏は、マーケティングディレクターを兼務する。

 コアラマットレスの日本上陸は17年。当初はミレニアル世代を顧客のターゲットに設定していた。そのためターゲット層が多く利用し、かつ効果検証がしやすいSNSの広告を活用して売り上げを伸ばしてきた。テレビCMを検討しなかったわけではないが、日本ではテレビCMのデータ不足を理由に放送を見送ってきた。

 創業の地であるオーストラリアでは、テレビCMも活用している。事前にテレビCMの放送予定時刻が分単位で共有されるからだ。その放送データと解析ツールを連携して効果を分析する。テレビCMは購買ファネルにおける認知拡大の役割が大きいため、KPI(重要業績評価指標)にはテレビCM放送後5分以内のWebサイトのアクセス数の増減、ブランド名の検索上昇率を設定している。

 一方、自社ECで顧客に直接商品を販売するD2Cでありながら、テレビCMの効果としてCVR(成約率)はそれほど重視していない。「テレビCMを見て、(7万2000円からと高額な)マットレスをすぐに買う人は少ない。1週間程度の検討期間を経てから買うケースが多い」(アダム氏)からだ。まずはブランド認知を拡大してサイトに誘引し、YouTubeやSNSの広告で徐々に購買意欲を高めていくマーケティング戦略をとっている。

コアラマットレスは自社ECサイトのアクセス解析データで、テレビCMの効果を分析する
コアラマットレスは自社ECサイトのアクセス解析データで、テレビCMの効果を分析する

 それらのKPIがテレビCMによってどう変化したかを、アクセス解析ツール上でリアルタイムに分析できるように設定している。「テレビCMの影響がすぐに分かるのが、オーストラリアと日本の違いだった」と、提供されるテレビデータの違いをアダム氏は説明する。

 同様の効果測定を日本でも実施できるなら、テレビCMを放送したいと考えていた。だが、広告代理店の営業担当者からは「そういった分析はできない」と説明を受けたという。そのため、日本では十分な効果検証ができないと考え、テレビCMの放送を見送ってきた。だが、それは思い込みだった。

 その誤解に気づいたのは、具体的にテレビCMの放送を検討し始めたころだ。ブランド上陸から3年が経ち、徐々にブランド認知率が高まってきた。また、新型コロナウイルスが流行して以降、住環境を充実させたい消費者ニーズや巣ごもり消費の拡大、YouTubeの広告施策の成功などによって売り上げが急増した。これを商機と捉え、より広く消費者にリーチできるテレビCM放送の機運が高まった。

日本でもオーストラリアと同等の施策は可能

 しかし、デジタルを起点とした効果測定に広告代理店は乗り気ではない。そこで、自分たちでデータをそろえて、効果測定できる方法を模索し始めた。さまざまなツールやサービスを検討する中でたどり着いたのが、PTP(東京・新宿)が提供するテレビデータ解析ツール「Madison」だった。

 MadisonはPTPが32のエリアで全てのテレビ番組を録画し、それを分析可能なデータとして提供するツールだ。放送された全国のテレビCMのデータや広告クリエイティブが翌日にはツール上で閲覧できる。競合との比較も可能だ。ビデオリサーチとの提携により、全ての出稿量を一般的なテレビCMの取引指標であるGRP(延べ視聴率)で表示できるのも特徴。Madisonの利用料は月額100万円から。各地域で限定的に放送されたテレビCM素材の分析などのオプションメニューを含めると最大で月額300万円。キリンビール、日本コカ・コーラ、ダイキン工業などが利用している。同ツールの提供開始は18年4月。つまりデータ自体は既に存在していたのだ。

 PTPはMadisonをいち早く個人視聴率にも対応させたため、現在はF1(20歳~34歳の女性)、M1(20歳~34歳の男性)といった特定層へのテレビCM到達率も個別に分析できる。過去のデータを分析すれば、どの局のどの時間帯にターゲット層が多く視聴しているかもデータで分かる。このデータを使えば、オーストラリアと同等のテレビCM分析ができるに違いない。そう判断して、Koala Sleep Japanは活用に乗り出した。

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