新技術・新商品提案書に書いた、たった一行の新企画、『落としても壊れない丈夫な時計』を開発するため、カシオ計算機の伊部菊雄は衝撃実験を行うことにした。しかし、締め切り間際になっても課題が解決できず、追い込まれた伊部は辞表提出も覚悟した。G-SHOCK開発の過酷な真実、第3話。
【第2回】G-SHOCK開発の糸口は、父がくれた高級時計の「ばらばら事件」
【第3回】G-SHOCKと苦悩 辞表提出まで追い込まれた窮地で得たひらめき←今回はココ
【第4回】ついにG-SHOCK完成 カシオへの恩を貫き通す
トイレで隠れて続けた実験
時計を落としたときに最も壊れやすいのは、電子部品で構成されているモジュール――心臓部分である。そこで心臓部分を保護材で包んで、高所から落とすことにした。
伊部はこう振り返る。
「1階のトイレの窓から下をのぞいたんです。そうしたら、うわっ、つまらないって思った。大した高さじゃない。それで2階に上ってみたんです。すると結構、この高さはいいなと思った。自分の部署(時計設計部)は3階にあるから、さらに3階のトイレにも行ってみたんです。実は私、ちょっと高所恐怖症の気があるんですが、下をのぞいたら足がぶるって震えた。この高さ、最高って思っちゃったんですね」
落下させたときの衝撃を計算して、3階を選んだのではないのですか、と問うと、伊部は大きく首を横に振った。
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