モスバーガーが非接触のアバターロボ 店員を転送する新メディア(画像)

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、商業施設で接客などのサービスにロボットを活用する動きが広がっている。Zoomなどビデオ会議ツールが急激に浸透したように、我々の社会にロボットは定着していくのか。注目が高まっているのは、ネット越しに人間が応対するアバター型のロボットだ。

モスバーガー大崎店で実証実験として運用した分身ロボット。「ゆっくりレジ」として対話を楽しみながら注文できるようにした。期間は2020年7月27日から8月25日まで
モスバーガー大崎店で実証実験として運用した分身ロボット。「ゆっくりレジ」として対話を楽しみながら注文できるようにした。期間は2020年7月27日から8月25日まで

 店員と客との接触を避け、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ手段として、商業施設でのロボット活用が広がっている。緊急事態宣言下でテレワークやZoomなどによるリモート会議が一気に浸透した。かつてない急激な社会の変化が、人同士の接触を避ける手段としてのロボット活用を加速する可能性がある。

 「新型コロナによる変化に対応し、新しい生き方を模索する上では、世界に広がった高速ネットワーク環境を生かす新たなロボットが必要だ」。そう説明するのは、ハウステンボス取締役CTOとしてロボットが接客する「変なホテル」を手がけ、ロボット開発のhapi-robo st(ハピロボ、東京・世田谷)社長でもある富田直美氏だ。

ハピロボが扱う「temi(テミ)」。写真は東京・世田谷の蔦屋家電+で展示した際の様子
ハピロボが扱う「temi(テミ)」。写真は東京・世田谷の蔦屋家電+で展示した際の様子

 ハピロボが扱うのは、米テミUSAが開発した自走可能なパーソナルアシスタントロボット「temi(テミ)」だ。スマホなどのアプリでインターネット越しにテミにアクセスし、自宅や職場の中を自由に移動しながらビデオ会話ができる。「ビジネス環境で発生していた無駄な時間をなくし、人々が持つスキルや知恵を互いに活用する手段が見直される。新型コロナでロボットの導入や進化が3~5年が短縮されるかもしれない」と富田氏は見る。

 マーケット調査会社の富士経済(東京・中央)の予測によると、2025年の業務サービスロボットの世界市場予測は4兆6569億円で、19年の2.3倍の規模になるという。これまで商業施設などでロボットの導入を進める上では、人間の従業員と比べて「コストが高い」「用途が一部に限られる」「運用の手間がかかる」という弱点があった。それら課題もIoTや通信技術の進歩によって解消されつつある。

従来のロボットが持っていた課題を解消しやすく、新型コロナウイルス感染拡大の対策となり得る技術としてアバター型ロボットの注目が高まっている
従来のロボットが持っていた課題を解消しやすく、新型コロナウイルス感染拡大の対策となり得る技術としてアバター型ロボットの注目が高まっている

 何よりも現在求められているのは、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、従業員と顧客の接触を減らすための技術だ。人を代替するAI(人工知能)を一から開発するよりも、コストを下げやすく、応対品質を高めやすいという点で期待が高まっているのが、人が遠隔操作するアバターロボットだ。

ゆっくり対話しながら注文できる

 「いらっしゃいませ~。こんにちは、マヤです。ご注文は何になさいますか?」。店内カウンター横に置かれた高さ23センチメートルの白い人形が手をバタバタとさせながら話しかけてくる。モスバーガーを展開するモスフードサービスが東京・品川の大崎店で20年7月末から約1カ月にわたり試験導入した分身ロボットだ。

 ロボットに近づいて話しても、飛沫によるウイルス感染の心配はない。従業員が応対するレジのようなアクリル板の仕切りもない。子どもたちも積極的に話しかけ、注文後には一緒にスマホで記念撮影をする。モスバーガーは、テクノロジーを活用しつつ、温かみのある接客をすることを目指し、分身ロボットの実験に取り組んだ。人手不足の解消に向けた対策として、18年11月にセミセルフレジ、19年12月にはフルセルフレジを一部店舗で導入してきたが、その一歩先のサービスを目指した。

 分身ロボットはインターネットにつながっており、操作をする「パイロット(操縦者)」の声を伝える。パイロットは、ロボットの額にあるカメラの映像を通して客と対話する。会話を楽しみながらじっくり商品を選びたい客に向けたサービスとして、「ゆっくりレジ」と名付けた。今回は実験段階であるため、分身ロボットで注文を受け付けたあとで、パイロットがスマホで注文内容を入力し、客が隣の有人レジで決済をする仕組みとした。

カウンターにはオリヒメが2台設置してあり、子どもと対話する際には低い位置にある機体へとパイロットが「移動」して対応する
カウンターにはオリヒメが2台設置してあり、子どもと対話する際には低い位置にある機体へとパイロットが「移動」して対応する

 「混雑時で後ろに人が並んでいると、焦ってしまってうまく注文ができないという人もいる。マヤさんは『ゆっくりでいいですよ』などと声をかけてくれる」(モスフードサービス)ので、対話をしながらじっくりと選びたい、世間話を楽しみたいなどのニーズに対応できる。

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