防災のために「ハザードマップ」を見て、自分の住む地域はだいたい安全そうだと思った人も、もう一度最新のハザードマップとその正しい見方をチェックしてほしい。近年相次ぐ台風・豪雨や地震の被害を受け、ハザードマップを新しいものに更新する動きがあるからだ。そこで有用となる「ハザードマップポータルサイト」の2つの機能について説明する。

※日経トレンディ2020年8月号の記事を再構成

ハザードマップの被害予想を実際に起こった災害の状況に照らすと、その有効性が明らかになる
ハザードマップの被害予想を実際に起こった災害の状況に照らすと、その有効性が明らかになる

 ここ数年、毎年のように発生する豪雨や地震による災害。その際に、地域住民の命を守る可能性をできるだけ高めるため、そして被害をできるだけ軽減するために国や自治体により作成されているのが「ハザードマップ」だ。洪水や津波の浸水予想、土砂災害の警戒区域、地震の被害予想、避難所情報などが地図上に表されている。

 下は長野市の洪水ハザードマップと2019年10月の台風19号による浸水被害とを比較・検証したものだ。全国各地で河川の氾濫をもたらした台風19号により、長野市では千曲川の堤防が決壊。市街地に川の水がどっと流れ込み、大規模な浸水被害が発生した。北陸新幹線の車両基地が水に漬かっている写真や映像を目にした人も多かっただろう。

 1つめの画像は、長野市が災害前に公表していた最新版の洪水ハザードマップ。河川が氾濫した際の浸水予想エリアが赤色で示されており、色が濃いほど浸水が深いことを表す。そして2つめが、国土地理院が作成した「浸水推定段彩図」。水害発生直後の情報と撮影した空中写真および標高データを用いて、浸水範囲における水深を推定し、地図上に表現したものだ。青色が濃いほど浸水が深かったことを示す。

実際の浸水エリアはハザードマップの浸水予想の範囲にすっぽりと収まる!

長野市の洪水ハザードマップ
長野市の洪水ハザードマップ
河川が氾濫した際の浸水予測に基づいて、浸水の範囲や深さ、避難所などが記載されている。赤色で示されているのが浸水予想範囲。色が濃いほど浸水が深く、濃いピンクのエリアの浸水深は10〜20メートル。前提は「想定し得る最大規模の降雨」。1000年に1回程度の降雨量として、千曲川については「2日間で396ミリメートル(流域全体)」、支流の浅川については「766ミリメートル/24時間(流域全体)」などの想定でハザードマップが作成されている
19年10月の台風19号による大雨で千曲川の堤防が決壊した洪水の際の浸水エリア(推定)
19年10月の台風19号による大雨で千曲川の堤防が決壊した洪水の際の浸水エリア(推定)
国土地理院が作成した「台風19号に伴う大雨による浸水推定段彩図(速報版)」。19年10月13日時点での情報収集と空中写真、標高データを基に、浸水範囲における水深を推定したもの(実際に浸水のあった範囲でも把握できていない部分、浸水していなくても浸水範囲として表示されている部分がある)。青色が濃いほど浸水が深かったことを示し、最も濃いエリアでは4〜5メートル程度

 この2つを重ね合わせると、実際の浸水エリアはハザードマップの浸水予想の範囲にすっぽりと収まっていることが分かる。浸水の深さはハザードマップの想定よりも浅かったが、濃いピンク色のエリアと濃い青色のエリアもほぼ重なっている。つまり、ハザードマップの有効性が確認されたわけだ。

ハザードマップの浸水予想の範囲と実際の被害エリアはほぼ一致
ハザードマップの浸水予想の範囲と実際の被害エリアはほぼ一致

 「令和2年7月豪雨での球磨川(熊本県)の氾濫でも、事前に公表されていたハザードマップの予想と実際の浸水域はほぼ重なっていた」(防災アドバイザーの岡本裕紀子氏)。こうしたハザードマップを見ることで、居住地域の災害リスクを知り、いざというときに早めの避難判断が可能になる。「洪水の場合、河川から少し離れた場所はやや時間がたってから浸水してくる。ハザードマップを見れば、浸水がどう進んで来るのかを先読みする力も付く」(岡本氏)

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