「ラジオを聴いて元気が出ました」「声に勇気づけられました」。災害が起きたときにラジオを聴いていると、被災地から届くこんなメッセージをよく耳にする。1999年の「ラジアンリミテッド」放送開始以降、20年以上にわたってラジオパーソナリティーを務めるやまだひさし氏と、ラジオウォッチャー・やきそばかおる氏が、災害のたびにその存在が見直されるラジオを語る。
※日経トレンディ2020年8月号の記事を再構成
――やまださんは11年の東日本大震災直後、平日昼のレギュラーとして、クイズやニュースを放送していた情報ワイド番組「シナプス」に加えて、深夜も生放送を担当されました。
やまだひさし氏(以下、やまだ) 震災の直後、深夜放送で誰がどんな番組をやるかという会議があって。「シナプス」のプロデューサーから、「TOKYO FMの深夜放送では長年、やまだひさしの声が流れていた。慣れ親しんだ声が一番、聴いている人の不安を解消できるはず。リスナーに寄り添って、放送をできるのは君しかいない。番組をやってくれ」と言われたんです。
やきそばかおる氏(以下、やきそば) 昼も夜も生放送とはハードですね。
やまだ 1週間くらい局の横にあるホテルに泊まり込みで、人生で一番忙しかったかも(笑)。実は米国で同時多発テロがあったときはちょうど生放送中で、当時「後は報道が引き継ぐから帰っていいよ」と言われた経験があって。その局から「やってくれ」と言われたら意気に感じるというか、やるしかないと思いましたね。
――震災の1カ月後には、被災地であるエフエム岩手釜石スタジオから「シナプス」の生放送をされました。
やまだ ニュースで見た映像だけで分かったようなことを言うのは嫌だったので、それまでラジオでも震災の話題はあまりしてこなかったんです。ディレクターから提案があったときは、待ち望んでいたという気持ちでした。釜石支局のスタッフが学生時代「ラジアン」のリスナーで、元気づけてほしいという話を聞いたときは、ラジオでつながってきた人が僕を呼んでくれている、力になれると言葉が出なかったですね。
また、現地で小学生にインタビューをしたときに、マンガ『ONE PIECE』がないという話を聞いて。リスナーに「余った巻、いらない巻があったら送ってほしい」と呼びかけたら、メッセージがびっしり書かれたONE PIECEが2日で全巻そろったんです。「たとえ近くにいなくても、いつも仲間が応援している」と感じてほしかった。翌月に直接届けたのですが、改めてラジオの力を体感しました。
――ラジオに関する連載を執筆するなど、“大のラジオ好き”であるやきそばさんは、東日本大震災の発生時もラジオを聴かれていたのでしょうか。
やきそば 文化放送の「大竹まこと ゴールデンラジオ」を聴いていました。地震後も大竹さんはスタジオに残られて、局のアナウンサーと一緒に放送をされていて。余震が起きる度に、大竹さんが「今揺れている」と言うんです。当時は一人でいたのですが、それがラジオと何か地続きというか、「大竹さんも同じ境遇にいるんだ」という安心感があったことを覚えています。
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