プリペイドカードは事前チャージ式の決済ツールだ。あらかじめ入金した残高の範囲内でしか支払いができないので、予算を意識しながら利用することで無駄遣いを防げる。クレジットカードだとつい使いすぎてしまう、という人にもお薦めだ。そこで今回は、数あるプリペイドカードの中から、初級者でも手軽かつお得に利用できる3枚を厳選して取り上げる。

プリペイドカードの上手な使い方を解説(イラスト/ぴーや)
プリペイドカードのお得な使い方を解説(イラスト/ぴーや)

楽々2%還元の「Visa LINE Payプリペイドカード」

 今回紹介するプリペイドカードの中で、最もシンプルにお得を享受できるのが「Visa LINE Payプリペイドカード」だ。バーチャルカードのみ(物理カードはなし)でサービスを提供しており、LINEアプリ上で簡単に発行できる。発行手数料・年会費は無料。スマホ決済のLINE Payと残高を共有する仕組みだ。

LINEアプリですぐに発行可能
LINEアプリですぐに発行可能

 バーチャルプリカは独自アプリをスマホに入れる必要があるものが多いが、Visa LINE PayプリカはLINEアプリだけで管理できる。利用すると、リアルタイムでLINEに通知が届く。

 物理カードはないものの、使える店は幅広い。AmazonやZOZOTOWNなどのオンラインショッピングはもちろん、スマホのApple PayやGoogle Payに登録すれば、iDやVisaのタッチ決済に対応する実店舗でも支払いが可能だ(一部の店舗・サービスでは使えない場合もある)。

 利用額に応じたLINEポイントによる還元があり、オンライン支払いでの還元率は0.5%。そして同プリカの最大の強みとなるのが、スマホでのタッチ支払い(iDまたはVisaのタッチ決済)で2%の還元が得られる点だ。

店舗では端末(リーダー)にスマホをかざして、iDまたはVisaのタッチ決済で支払える
店舗では端末(リーダー)にスマホをかざして、iDまたはVisaのタッチ決済で支払える

 後に取り上げるプリカは、クレジットカードからプリペイド残高にチャージした際のクレカ側の還元と、プリカ利用時の還元を2重取りするという、ひと手間をかけることで高還元を得る仕組みなのだが、Visa LINE Payプリカは単純にタッチ支払いするだけで2%還元を得られるシンプルさがメリットとなる。LINE Pay残高のチャージは登録した銀行口座から行うのが基本で、クレカからのチャージにはそもそも対応していない。

 還元されるLINEポイントの上限は月5000ポイント(5000円相当)。25万円の支払いまではフルに還元されるので、毎月の利用枠としては十分だろう。なお、プリカの支払時にポイントを充当することもできるが、ポイントを使った支払い分は還元の対象外になるので注意しよう。

 LINE証券の口座を持っていれば、ポイントを使ってLINE証券にまず入金し、その口座残高をLINE Pay残高に移す(出金する)というテクニックにより、還元の取り逃しを防げる。

LINE証券の入金方法にLINE Payを選び、ポイントを利用する
LINE証券の入金方法にLINE Payを選び、ポイントを利用する

還元の2重取り、3重取りが魅力の「Kyash」

 還元の2重取りを狙うプリカの代表格は「Kyash(キャッシュ)」。「Kyash Card Virtual」「Kyash Card Lite」「Kyash Card」の3種類がある。いずれも、クレカからKyash残高にチャージする際にクレカ側の還元を受け、さらにKyash利用時に0.2%のポイント還元を得るのが基本戦略となる。3種類とも年会費は無料で、国際ブランドはVisaだ。

 Kyash Card Virtualは、Kyashアプリ上で発行できるバーチャルプリカ。オンラインショッピングでの利用に加え、スマホのApple Pay、Google Payに登録すれば、QUICPayに対応する実店舗での支払いにも使える。

 Kyash Card Liteは物理カードを発行。QUICPayだけでなく、Visaが使える店でもカードによる支払いが可能になる(一部の店舗・サービスでは使えない場合もある)。Kyash Cardは物理カードにICチップやVisaのタッチ決済機能を搭載し、サインレス決済や海外利用など実店舗における利便性がさらに向上する。また、決済上限額なども優遇されている。

Kyash Cardの決済上限額は1回30万円、月100万円
Kyash Cardの決済上限額は1回30万円、月100万円

 Kyashの残高には2つの種類があり、それによってポイント還元率が異なる仕様だ。クレカからチャージした残高は「Kyashバリュー」の扱いになり、これを使った支払いでは0.2%の還元が受けられる。

 一方、銀行口座やセブン銀行ATMなどからチャージした残高は「Kyashマネー」の扱いになる。これを使って支払うと、Kyash Cardでは1%の、他の2種類のKyashでは0.5%の還元が受けられる。還元されたKyashポイントは残高にチャージが可能で、Kyashバリューとして扱われる。

 Kyashバリューは月に5万円の利用で、Kyashマネーは月に12万円の利用で還元上限に達する。クレカチャージとの還元2重取りを狙う場合は、利用額が月5万円を超えないようにしたい。

 3種類のKyashのうち、Kyash Cardは発行時と5年ごとの更新時に900円(税込み)の発行手数料がかかるので、そのコストも加味したうえで、自分の使い方に適した種類を選択しよう。なお、友達招待プログラムが期間未定で実施されており、既存利用者が発行する招待URLからKyashを新規で申し込み、銀行口座から5000円以上チャージすると、Kyash Card発行手数料相当の900ポイントが付与される。SNSやブログに招待URLを載せている人も多いので、探してみるといいだろう。

 Kyashにチャージが可能なクレカの国際ブランドはVisa、Mastercard、JCB、American Expressと幅広い(3Dセキュアに対応したクレカが利用可能)。ただし、Kyashへのチャージを還元の対象外としているクレカも多いので、事前の確認は必須だ。

 記事執筆時点では、1%還元のクレカではPayPayカード、マネックスカードなどがKyashチャージを還元の対象としている。また、1.2%還元のリクルートカードはブランドがVisa、Mastercardなら還元の対象だ(JCBブランドは対象外)。ちなみに、以前は楽天カードでも還元があったが、2022年7月から対象外になっている。

Kyashアプリにクレカを登録して残高にチャージする
Kyashアプリにクレカを登録して残高にチャージする

 KyashはスマホのApple Pay、Google Payにも対応。登録するとQUICPayでの利用も可能になる。

 また、「TOYOTA Wallet」にチャージできるのもKyashの強みだ。TOYOTA Walletは決済利用で1%還元(残高に加算)が得られるバーチャルプリカのサービス。クレカからKyashへのチャージ、KyashからTOYOTA Walletへのチャージ、TOYOTA Walletの利用と、還元を3重取りするためのハブとしてKyashが活躍する。例えば1%還元のクレカを利用した場合、合計の還元率は1%+0.2%+1%=2.2%にまで高められる。

スマホにTOYOTA Walletアプリを入れて利用する。実店舗でもiDなどで支払い可能
スマホにTOYOTA Walletアプリを入れて利用する。実店舗でもiDなどで支払いが可能だ

0.5%上乗せできる「au PAY プリペイドカード」

 「au PAY プリペイドカード」も、クレカと組み合わせてお得度を高められる1枚だ。au携帯電話やUQ mobile携帯電話、auひかりの契約が登録されたau ID、またはauじぶん銀行とひも付けたau IDを持っていれば発行できる。発行手数料・年会費は無料。Mastercardが使える店で支払い可能だ(一部の店舗・サービスでは使えない場合もある)。

国際ブランドはMastercard。ICチップは搭載しない
国際ブランドはMastercard。ICチップは搭載しない

 スマホ決済のau PAYと残高を共有する仕組みで、au PAYにチャージするとau PAY プリカでも利用できる残高となる。利用時には基本0.5%のPontaポイントによる還元が得られる。

 au PAYへのチャージが可能なクレカは以下の通り。まず、ブランドがMastercardかAmerican Expressであれば、発行元のカード会社によらず、すべてのクレカが利用できる。Visaブランドはau PAY カード、セゾンカード、UCカード、MUFGカード、DCカード、NICOSカード、TS CUBICカード、エポスカード、楽天カード、VIEWカード であればチャージ可能。JCBブランドはセゾンカード、TS CUBICカード、楽天カード、VIEWカードからチャージできる。

 また、携帯電話でau/UQ mobile/povo1.0を契約していれば、auかんたん決済(通信料金合算支払い)によるチャージも可能だ。この場合にチャージ元として設定できるクレカは、VisaとMastercardブランドではau PAYカード、セゾンカード、UCカード、MUFGカード、DCカード、NICOSカード、楽天カード、イオンカード、TS CUBICカード、セディナカードが対応する。またJCBブランドなら、より多くのクレカが利用できる(対象外となるのはアプラス、オリコ、ジャックス、UCS、ライフカード、ゆめカード、VIEW、ポケットカード、日専連、エヌシーの発行カード)。

 クレカチャージもauかんたん決済によるチャージも、au PAYへのチャージでクレカ側の還元が得られるかどうかは、やはり確認が必要だ。記事執筆時点で、1%還元で直接チャージできるクレカとしてはau PAY ゴールドカード、PayPayカード(Mastercard)、Amazon Mastercard、dカード(Mastercard)などがある。この場合の還元率は、1%(クレカチャージ)+0.5%(au PAY プリカ利用)で計1.5%になる。

au PAYアプリにクレカを登録して残高にチャージする
au PAYアプリにクレカを登録して残高にチャージする

 なお、リクルートカードや楽天カードはブランドによらず還元の対象外。また、au PAY カード(一般)も22年12月から還元の対象外となっているので注意したい。

 au PAY プリカは、Apple Payに登録するとQUICPayとして利用が可能。Google Payには対応しないが、Androidスマホのau PAYアプリにはSuicaと連携する機能があり、au PAY残高からSuicaにチャージして0.5%の還元が得られるのは利点だ。

 なおKyashとは異なり、TOYOTA Walletへのチャージはできない。また、以前はApple Payを使ってau PAY プリカからnanacoやWAONにチャージして0.5%還元が得られたが、22年11月から還元対象外になった(チャージ自体は可能)。

 最後に、Kyashとau PAY プリカには共通のメリットがあるので紹介しておこう。クレカの「利用金額による特典」を得る際に、これらのプリカへのチャージが有用になるのだ。

 例えば、クレカの新規発行のキャンペーンが「発行後3カ月以内に30万円以上の利用」といった条件の場合に、期間内に30万円の買い物をするのが難しいこともある。そこでプリカに30万円をまずチャージしてしまえば、あとは期間の制限なく、自分のペースでプリペイド残高を消費すればいい。もちろん、キャンペーンの適用条件としてプリカへのチャージが対象外になっていないかどうかの確認は必要だ。

 新規発行時だけでなく、一定期間内のクレカの利用金額に応じてボーナスポイントが付与される特典にも有効だ。例えば、三井住友カード ゴールド(NL)は年間100万円以上の利用で1万円相当のボーナスポイントが付与される。判定期間の締め日が近いが100万円に少し足りないといった場合に、プリカへのチャージで利用金額を調整できるのが便利だ。

 以上、個性的な3種類のプリカについて解説してきた。うまく活用して、日々の「お得な支払い」のレベルを一段とアップしていきたい。

注)情報は2023年2月中旬時点。サービス内容は今後変更される可能性がある。

(画像は各サービスのサイト、アプリから)

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