データ容量が大きいスマホ料金プランを契約することで、トータルの通信コストを節約できる場合がある。テザリング機能を用いてスマホをネット接続のルーター代わりにし、自宅の固定回線を思い切って解約すれば、年間数万円単位の費用削減も可能だ。そこで今回は、コストパフォーマンスに優れた大容量プランを取り上げる。
楽天モバイル
楽天モバイルの「Rakuten UN-LIMIT VII」は、段階性のスマホ料金プランだ。月の通信データ使用量が3GBまでは1078円(税込み、以下同)、3GBから20GBまでは2178円、そして20GBを超えた場合は無制限で3278円となる。月に100GBや200GBといった大量のデータを使っても、料金は3278円だ。また専用アプリを利用すれば、国内通話が無料でかけ放題という特徴もある。
楽天市場での買い物の還元率が上昇するのもメリット。楽天モバイル契約者かつダイヤモンド会員(楽天会員ランクの最上位)であれば、SPU(スーパーポイントアッププログラム)により、還元率が+3%になる。ダイヤモンド会員の条件は、「過去6カ月間にポイントを4000ポイント以上かつ30回以上獲得、さらに楽天カードを保有」。楽天市場で買い回りイベントに毎月参加している人なら、自然と達成できる程度の難易度だ。
楽天モバイルの弱点は、やはり通信の不安定さ。回線エリアは人口カバー率97%を突破したと発表しているが、NTTドコモ、au(KDDI)、ソフトバンクの4G回線が99.9%以上のカバー率であることを考えると、まだ十分とは言いにくい。楽天回線エリア外ではパートナー回線としてauの電波を用いているが、パートナー回線エリアでの高速通信の容量は月5GBまでと少なく、これを超えると通信速度が最大1Mbpsに制限される。自宅や職場などの生活圏が楽天回線エリアにしっかりと入っているか、必ず確認する必要がある。
ahamo
ドコモのオンライン専用ブランド「ahamo」の料金プランは、データ容量20GBで月2970円。ここに月1980円の大盛りオプションをつけることで80GBを追加できる。計100GBで料金は月4950円だ。ドコモ回線だけに、通信速度と通信エリアは共に安定・充実している。データ通信が100GBを超えた場合の速度制限は最大1Mbps。データ容量の翌月繰り越しはできない。
ahamoは5分以内かけ放題の無料通話サービスが標準付帯するので、短い通話を頻繁に行う人にもお薦めだ。なお、2022年12月の利用分まで、大盛りオプションの月額相当のdポイントがもらえるキャンペーンを実施しており、試すにはいい機会だろう。
povo2.0
KDDIのオンライン専用ブランド「povo2.0」は、基本料0円が特徴。使いたいサービスを使いたい分だけオプションとして購入するという、独特の仕様になっている。容量が最も大きいデータ通信オプションは、150GBで1万2980円(使用期限180日間)。これを仮に3カ月間で使うとすると、毎月50GBのデータ容量となる。月当たりのコストは約4327円だ。
また、24時間データ使い放題のオプションが330円で購入できる。システムアップデートやゲームデータのダウンロード、長時間の動画視聴など大量のデータ通信が必要なときに、このオプションをうまく活用すれば、さらにコスパ良く運用できるだろう。通話料金は通常22円/30秒。5分以内かけ放題の通話オプションを月550円、通話し放題のオプションを月1650円で追加も可能だ。
格安スマホ・SIMの大容量プランも有力候補
イオンモバイル
格安スマホ・SIMのイオンモバイルは、柔軟性が高い料金プランが特徴。大容量通信向けの「さいてきプラン MORIMORI」は20GBで月1958円、30GBで月3058円、40GBで月4158円、50GBで月5258円と、10GB刻みでプランが用意されている(料金は音声プランの場合)。
データ容量の翌月繰り越しに対応し、かつ容量のプラン変更が何度でも無料でできるのがいい点。月末最終日前日の18時59分まで、翌月のプラン変更を受け付けている。例えば50GBプランにしていた月に結局30GBしか使わなかった場合は、翌月のプランを30GBに変更しても、20GBの繰り越し分と合わせて50GBのデータ容量を確保できる。
利用回線はドコモとauに対応。ウェブに加えて全国のイオン店舗でも申し込める。弱点として挙げられるのは、時間帯により通信速度の低下がみられること。平日12時台など混雑する時間帯にデータ通信を多用する場合は注意が要る。通話料金は通常11円/30秒と、他社に比べて安めに設定されている。必要なら通話オプションとして5分以内かけ放題が月550円、10分以内かけ放題が月935円、通話し放題が月1650円で契約できる。
donedone
BIGLOBEが展開する格安SIMブランドであるdonedone(ドネドネ)。「ベーシックUプラン」はデータ容量50GBで月2728円とかなりの安さだ。低価格の理由は、通信速度が最大3Mbpsに常時制限されていること。もっとも、3Mbpsの速度があればYouTubeの高画質動画も再生可能で、ほとんどの用途において支障なく使えるだろう。回線はauを利用する。
他に、選んだ3つの対象アプリの通信では速度制限がされない「カスタムUプラン」も選べる。やはり50GBで月2728円だ。対象アプリはLINE、Instagram、Facebook、YouTube、ABEMA、TikTok、TELASA、Spotify、Amazon Music、LINE MUSICの10種類で、これらから3つを選択できる。
対象アプリは即時変更が可能で、例えば平日はSNSアプリを中心に使い、週末は動画アプリを中心に使うなど、入れ替えながら利用できる。一方で、対象アプリ以外での通信速度はベーシックUプランより遅い最大1Mbpsに制限される。データ通信の大半が10種類のアプリのいずれかであれば、有力な選択肢となる。
通話料は22円/30秒と標準的。かけ放題などの通話オプションは用意されておらず、またデータ容量の翌月繰り越しには対応しない点に留意したい。
mineo
donedoneと同じく、通信速度の制限により低価格を実現しているのが、格安スマホ・SIMのmineoが提供する「マイそく」プランだ。データ容量は無制限。速度が最大3Mbpsに制限されたプレミアムプランは月2200円、最大1.5Mbpsに制限されたスタンダードプランは月990円で利用できる。1.5Mbpsは、標準画質の動画を視聴するには十分な速度だ。最大300kbpsに制限されたライトプラン(月660円)もあるが、動画視聴には厳しく、大容量プランとしての活用は現実的ではないだろう。
マイそくプランの弱点は、月曜日から金曜日の12~13時は最大32kbpsと極端な速度制限が適用されること。この時間帯は音声通話やメールのテキスト情報のやり取り程度なら問題なく利用できるが、その他の用途ではほぼ使い物にならないと考えた方がいい。PayPayやd払いなどのスマホ決済もスムーズに使うには厳しい速度なので注意が要る。
この時間帯にはスマホをあまり使わない、あるいは自宅や職場のWi-Fiが利用できるなど、普段の使用環境を選ぶプランといえる。なお、どうしても高速通信が必要になった場合は、24時間データ使い放題のオプションを330円で購入できる。
ちなみに、マイそくプランは月のデータ容量こそ無制限だが、3日間で計10GBの通信を行うと速度制限(最大32kbps)がかかる場合がある。この対象になった際にも、24時間データ使い放題のオプションを利用すれば高速通信が可能だ。
利用回線としてドコモ、au、ソフトバンクの3大キャリアに対応しているので、手持ちのスマホをそのまま使いやすい。通話料は22円/30秒と標準的。通話オプションとして10分以内かけ放題が月550円、通話し放題が月1210円で利用できる。また、専用アプリを用いて通話料を10円/30秒と安くできる「mineoでんわ」サービスもある(アプリ利用は無料)。
以上、コスパに着目してスマホの主な大容量プランを解説してきた。特徴をまとめると、
●データ無制限で月3278円。専用アプリで通話も無料の「楽天モバイル」
●100GBで月4950円。通信安定、5分以内かけ放題もつく「ahamo」
●150GB(180日間)で1万2980円(3カ月間で使うと月当たり50GBで約4327円)。24時間データ使い放題(330円)も便利な「povo2.0」
●50GBで月5258円。データ繰り越しと柔軟なプラン変更の使い勝手がいい「イオンモバイル」
●50GBで月2728円。使い方に応じて2種類のプランを選べる「donedone」
●データ無制限で月990円(1.5Mbps)など。平日昼の速度制限が許容できればコスパ最強の「mineo」
となる。
自分に合った大容量プランを見つけて、通信コストの節約につなげたい。
(画像は各サービスのサイトから)

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